日本が“貧困”から脱出するヒントは独自のファッション「きもの」にある訳

 

3.独自ファッションを失った貧しき時代

バブル崩壊後、中国製品の輸入が増え、「激安ブーム」が起きました。そこから25年間、アパレル業界のみならず小売流通業界は、とにかく「安く作って安く売る」ことだけを考えてきました。海外生産に依存したので、生産性向上もトータル流通コストの削減というテーマも忘れ去られました。

とにかく、原価を下げるために素材の価格を落とし、工賃を叩くことだけでやってきました。いつしか、「安くて良い商品」から「安いだけのそれなりの商品」に変わってしまいました。新しいビジネスモデル、新しい売り方、DX等にも取り組まず、というよりイノベーションに関心がなく、ルーティンワークだけを繰り返してきたんだと思います。

国内生産国内消費の時代は、国内でお金が回っていました。製造業の利益、流通小売業の利益も最終的には市場に還元されました。しかし、全製品を日本に持ち帰ることが前提の中国生産の時代は、製造業の利益がそっくり中国に流れます。その分、日本は貧しくなり、可処分所得も減少しました。

日本の大企業も海外投資家の支配が強まり、利益は海外に流出していきました。日本が海外で稼いだお金も米国債等に流れ、世界一の対外資産保有国でもその資産は使えず、米国は借金を使いまくっています。

日本人が行っている投資も、国内のベンチャー企業に流れるのではなく、どこかの国や企業の債権に姿を変えて、世界を回っています。そのうち、市場が暴落し、インフレが加速すれば、資産価値もなくなります。

外資のファストファッションもラグジュアリーブランドも、利益は海外に流れていきます。表参道も銀座も昔は日本企業の店が並んでいましたが、現在はほぼ外国資本の店に変わりました。そこにインバウンドの観光客が来て、買い物をしても日本に落ちるお金はほんの一部です。

更に、商業地の不動産も外国人が買いあさっています。このままいくと、日本の中で行われているビジネスに日本人は全く関与できなくなるでしょう。日本人は低い賃金で働くだけの存在になります。

グローバルな商品は、どの国でも生産できるし、どの国の企業でも扱え、どの国でも売れます。多くの経営者は、それを目指すことが良いことだと信じてきました。そして、皆で貧しくなる方向に進んでいきました。

日本デザイナーが日本国内メーカーで作る商品は、日本企業が扱います。買い物とはある意味で投資です。日本に投資すれば、日本人にお金が回ってきます。

ファッションは人格を演出するツールであり、周囲に与えるイメージをコントロールできます。グローバルブランドを身につけることは、グローバルな階層社会に組み込まれることです。我々が日本人としてのアイデンティティを持つには、独自の文化、独自のファッションが必要です。ファッションは無駄なものではなく、グローバル社会の中で独立を勝ち取るための重要なツールなのです。

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