3.デニム無限リサイクルの提案
デニムは経年変化を楽しむことができます。新品のデニムも良いのですが、使い込んでいくことで味が出ます。更に、数十年経過した古着にも独自の価値が生じます。そう考えると、最もサスティナブルなアイテムかもしれません。
このデニムの性質を最大限に活用するサスティナブルなビジネスモデルを提案したいと思います。
まず、上質なデニムで作られたデザイナーズジーンズを制作します。できれば、製品にはナンバリングを付けて着用者が登録できるようにしたいと思います。
仮に小売価格を3万円で設定します。商品原価を1万円、デザイン費用を1万円、プロジェクト運営に1万円とします。
事前に資金が必要ならば、クラウドファンディングで予約注文を取るのも良いでしょう。
販売は販売イベントを通じて行います。販売イベントは年2回、3日間ずつです。イベントでは販売だけでなく、デニムに関するトークショーやリフォームのワークショップ等を行います。イベントは一カ所からスタートし、人気が出ればイベントの開催場所を増やしていきます。
ここで販売されるデニムは全て下取り保証がつきます。たとえば一律1万円で下取りするとします。購入した翌日でも、10年間着用して下取りしても同じ1万円です。新品と買い換えるならばプラス2万円で購入可能です。下取りも販売同様、イベント会期中に行います。
下取りした製品は洗濯され、リフォームデザイナーによってリフォームされ、デザイナーのブランドネームをつけて販売されます。リフォームデザイナーにはデザインと作業の費用として1万円支払います。その中で工場への支払いとデザイン費用等を充当してもらいます。
基本の販売価格は3万円と設定します。新品とリフォーム商品を同じ価格で販売するところがポイントです。つまり、このデニムは価値が減らないということです。そして、使った分だけの体験がプラスになります。
人気が高くなれば、オークション販売を取り入れて、最低価格3万円からオークションを行い、差額は社会貢献の寄付に充てます。
販売イベントには毎回新作デニムと、リフォームデニムが発表され、販売されます。継続していけば、参加デザイナーも増えるでしょうし、海外から集客することもできるでしょう。
このプロジェクトを実現するには、もっと詳細な計画が必要になりますし、金額の調整も必要になります。しかし何より重要なのは、プロジェクトの継続性です。このイベントは10年、20年、100年と続いてこそ価値が出ます。個人や企業が単独で行うには荷が重いのです。
プロジェクトそのものを持続可能にすることが、製品のサスティナビリティを高めることにつながります。
編集後記「締めの都々逸」
「持続困難 オヤジが悩む サスティナブルな 古女房」
サスティナブルっていろいろなところで使われますね。地球の持続可能性、環境の持続可能性、生態系の持続可能性、そして産業やビジネスの持続可能性。これらは必ずしも一致するものではなく、対立するものもあります。それを各々の立場で勝手にサスティナブルを主張しているわけです。
そもそも「地球に優しい」という表現も地球を舐めています。地球は人類が滅びたところでビクともしません。気候変動も悠久の歴史の中のほんの1ページです。結局、人間が心配しているのは人間の持続可能性だけです。
自然と人間を対立して考え、自然に打ち勝つという発想は結局、自然破壊につながります。日本のように自然に手を入れることで、生態系がより豊かになるというのが理想ではないでしょうか。(坂口昌章)
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