2.ペットボトルのリサイクル繊維を考える
繊維業界でサスティナブルの代表格がペットボトル(ポリエステル)のリサイクル繊維です。「この製品はペットボトルのリサイクル繊維を使っています」と付記表示することがサスティナビリティに貢献している証になっています。
しかし、私はこの状況について、様々な疑問を持っています。
日本で清涼飲料水にペットボトルの使用が認められたのが1982年で当初は散乱ゴミへの懸念から1リットル以上の大容量に限定されていましたが、96年に自主規制を撤廃。ペットボトルの使用量が爆発的に増加し、当然ゴミも増加しました。
2016年の統計では、年間232億本のペットボトルが出荷されたと推定されています。そのうち、未回収ボトルが26億本です。
日本のペットボトルリサイクル率は85%と欧米に比べると高いのですが、現状ではペットボトルがペットボトルへとリサイクルされることはほとんどありません。
リサイクルすると純度が下がり、品質が落ちるからです。あまり品質を要求されないカーペットやフリースに再加工されているので、リサイクルというよりダウンサイクルであり、実質的にペットボトルはワンウェイ容器ということになります。
品質が低くて価格が高いというのがリサイクル原料の現状です。ですから、リサイクル原料を通常の原料に混ぜて使用することが多く、ゴミの回収というより、「リサイクルに貢献しています」というPRのために使われることが多いのです。かつて再生紙使用の名刺が流行したのも同様の理由からでした。
更に、再生したフリースもまた、洗濯時に毛が抜けて、それが下水を通りマイクロプラスチックとして海中に放出されることが確認されています。フリースそのものも大量に生産すると海洋プラスチックが増えるということです。
もし、本当に環境のことを考えるならば、ペットボトルを使用せずに、ガラス瓶や紙容器にするべきでしょう。実際、ユーグレナはペットボトルを全廃し、紙容器に切り換えました。
軽くて温かく安価なフリースも、綿のダウンプルーフの生地のダウンウェアウールのニットや生地に切り換えることができます。
そもそも、ペットボトル=ポリエステルは、自然界において性能が良すぎるのです。安くて丈夫で生分解もしません。
やはり天然繊維を中心に、せいぜいレーヨン系までにすれば、生態系を傷つけることはなくなります。
個人的には、リサイクルよりもポリエステルの生産量を減らすことを考えるべきではないかと思います。
日本のゴミ焼却炉は高性能になっており、プラスチックゴミも燃やすことができます。ですから、リサイクルよりも、完全に燃料として燃やし、それで発電や地域暖房等に活用することも一つの方法でしょう。
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