東日本大震災13回忌を前に考える、被災地と他の土地の埋まらぬギャップ

 

南三陸町東日本大震災伝承館・南三陸311メモリアルは建築家、隈研吾さんのデザインがひときわ目につく施設で2022年4月にオープンした。

震災のシンボル的な存在となった防災庁舎を遺構とした公園には、店舗が並ぶさんさん商店街やかつてのJR志津川駅跡もある。

この施設は「東日本大震災の経験を共有し“自然とは、生きるとは”に思いを馳せ、語り合う場」と説明する。

こちらは被災者の語りから実体験を伝えることに重きを置いているようで、コンテンツとしてラーニングプログラムを用意してあり「その避難が生死を分ける」「助かった命を守る」「住民同士の助け合い」がテーマだ。

「自然とは、生きるとは」という問いは、自然現象の災害とともに生きることの決意を示しているようにもみえる。

このテーマは考えれば、考えるほど哲学的な思考になっていくが、より自覚的な「生きる」につながっていくとすれば、施設の存在の意味合いは深くなる。

気仙沼市と南三陸町は東日本大震災の支援で直後から関わってきた地域であり、毎年のこの地を訪れ、1年毎の変化を感じてきた。

今回、初めて目にする311メモリアルは、骨組みだけとなった防災庁舎と一体化した公園にあり、その庁舎とともに震災を伝える覚悟を示したと受け止めたい。

震災1年後あたりから、防災庁舎を解体するか、遺構として残すかの議論が交わされ、地元の賛否も聞いてきたし、実際にその庁舎で亡くなった遺族の思いにも触れてきた。

その過程を踏まえれば、遺構にするからにはそれなりの決意を持って、「活かす」べきなのであろう。

そう考えた時に、この施設を活かすのは行政や地元任せではなく、外部との対話や生の声で構成されるつながりなのだと思う。

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館では語り部の若いボランティアが誠実に説明し、1階のホールではイベントも開催されていた。

その動きは、この施設が生きている、ようにも思えた。

311を見つめながら、私たちは対話から新しい未来を考えていきたいと思う。

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image by: 一般社団法人南三陸町観光協会 - Home | Facebook

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