プーチンの痛恨。ウクライナ侵攻で壊滅的に低下したロシアの影響力

 

影響力の低下が著しいロシア

次にロシア。私は2021年の12月から、ロシアがウクライナに侵攻する可能性について言及していました。そして、侵攻の結果については、「ウクライナでの戦闘に勝っても負けても、【 大戦略的敗北は不可避 】である」と繰り返し主張してきました。これは、何でしょうか?

ロシアは2014年3月、ウクライナからクリミアを奪いました。鮮やかな【 戦術的 】大勝利です。しかし、その後日本と欧米は、ロシアに経済制裁を科した。それで、ロシアの経済成長は、止まってしまったのです。

ロシアは、プーチンの1期目2期目、つまり2000年から08年まで、年平均7%の成長をつづける高成長国家でした。ところがクリミア併合後、2014年~2020年の成長率は、年平均0.38%まで落ち込んだのです。

つまり、ロシアは、クリミアを奪ったことで経済成長できない国になった。これを私は、【 大戦略的敗北 】と呼んでいます。

今回は、「クリミア併合」で起こったことが、もっと大規模に起こっています。ロシアは国際社会で孤立し、厳しい制裁で、経済はボロボロになっていきます。

特筆すべきは、プーチンのミスにより、ロシアは、「旧ソ連圏の盟主」の地位を失いつつあること。どういうことでしょうか?

ウクライナ侵攻後の旧ソ連諸国の動きを見ると、

  • ウクライナ、モルドバ、ジョージアが、EUに加盟申請をした
  • コーカサスの石油大国アゼルバイジャンは、ロシアから離れ、トルコに接近している
  • トルコから支援を受けるアゼルバイジャンは2022年9月、アルメニアと軍事衝突
  • アルメニアは、ロシアを中心とする軍事同盟CSTOに支援を要請
  • しかし、ロシアは、アルメニアを見捨てた
  • これを受けてアルメニアでは、CSTO脱退の動きが強まっている
  • 同じく2022年9月、中央アジアの旧ソ連国キルギスとタジキスタンの武力衝突が起こる
  • 両国は、ロシアを中心とするCSTOの加盟国だが、ロシアはこの紛争を放置した
  • 中央アジア一の大国カザフスタンのトカエフ大統領は、プーチンの派兵要求を拒否し、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国の承認も拒否した
  • 結果、ロシアとカザフの関係は悪化
  • これらの動きから、中央アジアの旧ソ連国とロシアの関係は悪化。中央アジア諸国は中国に接近している

というわけで、ここ1年間、EU、トルコ、中国が旧ソ連諸国での影響力を強めました。それだけ、ロシアの影響力は低下したのです。

ちなみにウクライナ侵攻開始1年目にあたる2月24日、国連総会では、「ロシア軍の即時撤退を求める決議」が圧倒的多数で採択されました。BBC2月24日を見てみましょう。

国連総会は23日、ロシアのウクライナ侵攻開始から丸1年となるのに合わせて開催された緊急特別会合で、侵攻を非難する決議案を圧倒的多数で採択した。141カ国が賛成し、ロシアを含む7カ国が反対、中国やインドなど32カ国が棄権した。

 

決議案は、ウクライナからのロシア軍の撤退や戦闘の停止、可能な限り早期に平和を実現することなどを求めるもの。

国連加盟国は193か国。そのうち141か国、つまり73%の国々が「ロシア軍の即時撤退」を求めています。

そして、インドや中国など32か国が棄権。これらの国々は、中立の立場。親プーチン派は、中立の国々をちゃっかり「ロシアの味方」にしていますが、中立は、中立です。

この決議に反対し、「ロシア支持」の立場を明確にしたのは、6か国だけ。ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、マリ、ニカラグア、シリア。なぐさめにならない面子です。

というわけで、ウクライナ侵攻から1年。プーチンの大戦略的ミスによって、国際社会におけるロシアの影響力は破滅的に低下しています。

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