ウクライナなどというのはその程度の連中だから、ちょっと攻め込んだらすぐに万歳してしまって、抵抗もしないだろうと思っていたら、大違いだった。少なくとも2014年以降の8年間でウクライナは非常に強いアイデンティティーを作り出したのだと思います。以前からあったものを飛躍的に強化し、軍の改革も行い、一つの軍事強国のようなものを作り上げていた。そこに攻め込んだので、簡単に勝てないどころか、大変な損耗を強いられる泥沼の戦いに入ってしまったということだと思います。
非ナチ化と言っていることの具体的な中身は何かと言ったら、ゼレンスキー政権の打倒ですね。と当然、その後にロシアの言うことをよく効く傀儡政権を打ち立てると。ルガンスクとかドネツクなどで今擬似的にやっている話の全ウクライナ版。ロシアと仲良しのウクライナ大統領の政権を作り上げることだと思います。
それって、全然無理な話。とにかくロシア軍は最初15万人で攻め込んで、今、予備役を30万人動員した、実は動員したのは50万人だったという話が急に出てきていますが、それを入れて65万という数字。でもウクライナ軍は100万人いる。で、自分たちの領土で戦っている。ウクライナのアイデンティティーが出来つつある中で、大変士気が高くて、一人一人のウクライナ兵がなぜ戦うのかについてよく理解していて、そこはロシア兵と大きく違うところだと思います。
何でも、「祖国防衛の日」とかいう、元々は確か赤軍の記念日だった祝日があるそうでして、そういう日を祝うそうですが、「祖国防衛戦争」を戦っているのはロシアではなく、ウクライナですよね。まさにそういう形になっている。となれば非ナチ化という言葉に組み込まれたゼレンスキー政権打倒とか傀儡政権樹立、こういったことはロシアにとってはおよそ実現できることではない。
中立化はNATOに加盟するなという話ですよ。勿論、傀儡政権が出来ればNATOには近寄りもしないでしょう。それはウクライナの政権ではなく、ロシアの政権になるわけですからね。ただこれはNATO側の事情も当然あるでしょうし、NATOの範囲は今非常に広いですからね。ウクライナ側の事情もあるかもしれませんね。NATOに何も加盟しなくてもいいということがあるかもしれない。ただしその場合には安全保障をどうするかについて、何らかの…こういうのもステークホルダーというのか知りませんが、関係する諸国家による協約のようなものが必要になってくるかもしれませんが、NATOに加盟するなという要求をロシアが持っているということ自身、典型的な冷戦思考に他なりません。ところがプーチンさんの頭の中では全部逆転されている。
で、ウクライナのゼレンスキー政権が要望しているのはNATOに入れて守ってくださいということでは、必ずしもない。というのは支援しているのはNATO以外の国もたくさんあるわけですよね。NATOの論理とは違う理由でウクライナを支援している。侵略を受けるウクライナを支援している。これというのは、ロシアの脅威に共同して対処しましょうというNATOではなく、ロシアがやっている国連憲章に反するような、あるいは戦争犯罪を含む非道に関して、人道主義の立場から批判する、即刻撤退を要求する、困っているウクライナに関しては可能な限り支援する、そういうことじゃないですか。そのような諸国家の連合というのは、これはNATOとは次元が違うので、むしろそのようなものによる安全保障。悲しいことに今は国連ということになってしまうわけですが。
とりあえずは国連の安保理はこの間機能していないので、いや、そんなことを一言で言ったら怒られますが。皆さん必死の思いでやられている、日本の外務省の人たちを含めてね。でも、うまくは行っていなかった。だとすれば、そういう新しい国際的な枠組みの中でウクライナの安全を担保できるようにしないといけないわけですね。
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