もはや核しかない。それでもプーチンがボタンを押せぬ単純な理由

 

それから非軍事化。ウクライナ軍をなくせ、みたいな話ですね。これはロシアからすれば切り取ったドンバス(切り取れていませんが)と、クリミアをロシア領として確保することを確実ならしむる、ということとつながっているのだと思います。

仮にその状態のまま何らかの形で停戦が成立したとしても、ウクライナ側が失地回復の行動を起こすことはいくらでもあり得ますよね。ロシアにとってもあり得るわけで。だから目標といったところで無理な話ですね。

そうやって見てくると、「非ナチ化」にせよ「中立化」、「非軍事化」にせよ、プーチンさんが目指すと言っていることはことごとく不成立。軍事的には、もうこれは何週間も前から言っていることですが、西側の最新鋭というか、標準的な戦車群がウクライナに供与されて実戦に投入されるまでの間にロシア軍が優勢を確保できてしまうのか否か、今そのつばぜり合いというか、どちらが先にゴールに滑り込むかという争いになっている。

現実には東部地域で激しい戦闘が行われていて、ロシア軍は、大量に動員された予備役の兵隊を前線に押しやって攻め込ませ、何人死のうが突進してその間にウクライナの陣地を突破する。何人目かで突破するというような、人の命を命と思わない戦法さえつかって侵略している。それに対してウクライナ軍側が支えきれなくなった場合には撤退して防御戦を敷き直し、そこを守る。そこにロシアがまた人海戦術を仕掛けて推す、ウクライナ軍が撤退する、というような、ウクライナ側がじりじり押されていくという状況。

ロシア軍の方が人数も多いですし、全体的な力は強いですからウクライナ軍は押されていくのですが、押され切らないようにしてとにかく支援、友軍を待つという状況のようです。それが現状だということだと思います。

このところしきりに核による脅しが行われるようになってきていますが、核弾頭搭載のミサイルの話にしても、今のロシアには、その一部は作り続けられるらしいですが、西側の制裁の結果として高性能の半導体が手に入らないので、モノによっては作りきれないということもあるようです。

プーチンさんはこの間、核に関して二つ大きなことを言っている。一つは新START。米ロ間に唯一残った核兵器削減の条約。この履行を停止すると言っている。現在の条約は2026年まで効力があり、この間にお互いの査察なども入っているのですが、これを停止する。その間に核実験さえやりかねない話になっている。核戦力の強化をすると言い切っていますので。

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