開発期限まで残り数か月を切った時、残念ながら99%成功しないと思い至りました。
いかに自分を納得させて諦めるか──。
考えた末に、「24時間考え続けて1週間経っても解決策が浮かばなかったら、会社にお詫びをして辞表を出す」、そう腹を括って最後の実験に臨んだのです。
睡眠中でも解決策を考えられるように部品を家に持ち帰り、枕の横に置いて寝ました。
しかし、月曜日から始めて土曜日になっても何一つ解決策が思いつきません。日曜日を迎えるのが恐ろしく、懸命に起きていたものの、いつの間にか眠ってしまいました。
日曜日の朝、出勤して自分の荷物をまとめ、辞表を出す準備を進めました。
未練が残っていたので思いつく限りの実験を試みましたが、どれも失敗。
昼食休憩からの帰り道、「このまま会社に戻りたくない」と思い近所の公園のベンチに腰掛け、子供がボールをついて遊んでいる様子をぼんやりと眺めていました。
「いいな、子供には悩みがなくて」
……そんなことを考えていた矢先、突然そのボールの中に時計のモジュールが浮いているように見えたのです。
時計の中でモジュールが浮いたような状態にすれば、どんな高さから落としても壊れない!
そう気づいた瞬間、頭の中で裸電球がピカッと光り、解決策が閃いたのでした。
他の部品との接触面を極限までなくすことでモジュールを浮いた状態に近づける。
このアイデアを元に翌月曜日、「五段階衝撃吸収構造」をベースに、モジュールを点で支えて浮遊に近い状態をつくり出すことに成功。
この方法で誕生した時計は、何度三階から落としても全く壊れなかったのです。
遂にG-SHOCKは完成し、1983年に商品化されたのでした。