振り返れば、「落としても壊れない時計」が実現可能かと考えるよりも先に創作意欲が先行したこと。
絶対に完成させるのだと覚悟を決めて自らを極限状態に追い込んだこと。
その情熱がアイデアを生み出し、開発を成功に導きました。
加えて私を突き動かしたものは、企画書の提出直後に設定した具体的なターゲットの存在でした。
研究所の前で道路工事をしていた5人の作業員が全員腕時計をつけていない姿が目に留まり、危険な作業に携わる方でも安心して使用できる時計をつくろうと考えたのです。
誰かの役に立ちたいという情熱は、私の心を何度も鼓舞してくれました。
薄型時計が主流の時代、発売当初は黒くゴツゴツとした印象のG-SHOCKはなかなか受け入れられず、日の目を見ない時期が続きました。
その中でもG-SHOCKの可能性を信じて製造し続けてくれた会社や、販売に奔走してくれた営業マン、定期的に取り上げてくださったメディアの皆様には感謝しかありません。
アメリカでは耐久性が評価され売れていましたが、1990年代になってようやく逆輸入の形で国内でも売れるようになり、G-SHOCKはタフネス時計の代名詞として確固たるブランドを築きました。
2008年、56歳の時から私は世界各国を回って、G-SHOCKの開発に懸けた思いをスピーチ原稿にまとめ、お客様に現地の母国語で直接お伝えするイベントに参加しています。
今後もG-SHOCKの魅力を伝え続けると共に、例えば宇宙空間でも通用する腕時計など、誰もがアッと驚きワクワクするような企画を考え、G-SHOCKのさらなる可能性を追求していきます。
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