ChatGPTで「君、クビね」続々。AI失業の米国最新事例とは?Windows95の父・中島聡がAuto-GPT、BabyAGIを「今すぐ使え」と叫ぶ訳

 

ChatGPT爆発的ヒットの裏に、巨額資金を提供したMicrosoftの存在

今話題のChatGPTは、GPT-3を少しだけ進化させたGPT-3.5に、「チャット」という直感的に使えるアプリケーションを作った上で、それを誰でも無料で簡単にアクセスできるようにしたために、爆発的なヒットになったのです。

OpenAIは、GPT-3をChatGPTという形で一般公開した理由に関しては、「より多くの人に評価して欲しかったから」と説明していますが、その発表直後に、さらに大幅に機能アップしたGPT-4をリリースした上に、Microsoftから巨額の資金調達をしたことから考えて、AIをサービスとして提供する「AI as Service」を営利事業として運営する準備ができたから、と私は解釈しています。

OpenAIは、元々は「人類全体に利益をもたらす人工知能を作る」ことを目的にし、Elon Muskらの支援を受けてスタートした非営利団体です(2015年)。しかし、非営利のままでは、必要な研究開発投資ができないことを理由に、Elon Muskと決別して、営利企業へと転身した上で、Microsoftから資金調達を行いました(2019年)。

OpenAIが、非営利団体として活動していた時代のソフトウェアは、すべてオープンソースで公開されていましたが、Microsoftから投資を受けて営利団体に変わってからは、非公開となり、Microsoftのみにソースコードにアクセスできる特権が与えられました。

GPT-4クラスの人工知能をトレーニングするには、莫大な量のデータと、計算資源が必要です。インターネット上にあるすべての文章を使って、スーパーコンピュータを数ヶ月間、独占的に使ってトレーニングするイメージです。

当然ですが、その計算資源を提供したのはMicrosoftだし、さらに作った人工知能をサービスとして提供する際に必要な計算資源もMicrosoftが提供しています。

なぜChatGPTの成長スピードはTikTokよりも圧倒的に早いのか?

OpenAIがChatGPTをリリースしたのは、2022年11月30日ですが、このサービスは、わずか2ヶ月で1億人のユーザーを獲得するという、これまでリリースされた、いかなるアプリ・サービスをも上回るペースで、普及しました(1億人のユーザーを獲得するのにInstagramは2年半、TikTokですら9ヶ月かかりました)。

なぜこれほどまでに、ChatGPTが急速にユーザーを獲得することができたかは注目に値します。これまでのサービスと違って、「いきなり大きな価値を提供してくれる」点が根本的な違いです。

InstagramやTikTokは、ソーシャルネットワーク・アプリなので、他の多くの人が使ってこそ、価値があります。そのため、リリースしたばかりのユーザーが少ない時期には、提供する価値も少なく、なかなかユーザーが増えないのです。また、それらは基本的には「エンターテイメント」「時間つぶし」であり、仕事や勉強に直接的に役に立つわけではないのです。

それと比べると、ChatGPTは、ユーザーの数に関係なく、価値が提供できているサービスである上に、仕事や勉強に直接的に役立つ点が、これまでのアプリやサービスと大きく異なります。

「使わない日はない」爆速エンジニア中島聡のGPT活用術5つ

私自身は、ChatGPTがリリースされる前から、GPTを仕事に活用してきました。具体的には、

  • 長い文章を要約する
  • 英語の文章を日本語に翻訳する
  • 私の書いた英語を、きちんとした英語に直してもらう
  • Google検索では簡単に答えが見つからない調べものをしてもらう
  • 使い慣れていないライブラリの使い方を教えてもらう

などです。

具体例として、[Baseball Has Changed](https://www.nytimes.com/2023/04/23/briefing/baseball.html)というNew York Timesの記事をChatGPTに要約させました。与えたプロンプトは、「以下の記事の内容を400字程度の日本語に要約してください。専門用語を使わず、中学生にも理解できるぐらいにわかりやすく書いてください」です。

この要求に対する回答は、以下のようになります。

野球のルールが変わり、試合の持続時間が短くなっている。球場に設置されたタイマーによって、ピッチャーがボールを投げるまでの時間が計測され、ボールが投げられるまでの時間が短くなっている。また、野球の人気低下への対策として、守備位置の制限などのルール変更が行われ、ヒット数や盗塁数が増えるなど、よりアクションのある試合になっている。これにより、試合の持続時間は短くなったものの、野球の本質であるピッチャーとバッターの対決の難しさには変わりがなく、野球人気の回復にはまだ課題が残っている。

私は、この要約機能をメルマガ執筆の際にも使っていますが、単に時間を節約したい時、もしくは、その文章を読みたいかどうかを判断する際にも使っています。

また自分の書いた英語を、よりきちんとした英語に直してもらうこともよくあります。私が2015年に LinkedIn に書いた文章の一部を、ChatGPTに修正させた例をご紹介しましょう。

私の英語は、単に情報を伝える、という意味では十分ですが、「もの書き」としてはど素人で、リベラルアーツの大学を卒業した学生に負けるレベルです。スペルの間違いや文法の間違いぐらいであれば、既存の校正ツールで直せますが、これが限界です。

それをChatGPTに依頼するだけで、そんな「拙い文章」を雑誌の記事に使えるレベルにまで引き上げてくれるのですから、これほど便利なものはありません。それどころか、要点だけ箇条書きにして、「綺麗な文章にしてくれ」と依頼するだけで十分なため、必要な時間も圧倒的に短くなります。

調べものに関しても、「Google検索よりGPTに聞いた方が早い」ケースが出てきており、私は毎日のように活用しています。

実際に書き直してもらった文章は――

 

※この後半では、中島さんが20年に一度の「地殻変動」と呼ぶ米国での変化、そしてChatGPTによる新たな産業革命「AIX時代」に生き残る人材の条件について紹介しています。ぜひメルマガをご登録いただきお楽しみください(メルマガ登録は初月無料です)。

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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