「寝た子を起こすな」衆院解散前に統一教会問題の再燃を警戒する岸田文雄の本音

 

岸田のやる気の無さを招いているメディアの横並び意識

むろん、政府・与党内には「信教の自由を侵しかねない」との意見も根強い。しかし、これについても問題はないはずだ。

オウム真理教への解散命令に対する教団側の抗告を棄却した最高裁(1996年1月30日)は、「宗教法人の世俗的側面を対象とし、精神的・宗教的側面に容喙する意図によるものではない」と、解散命令が「信教の自由」に反しない根拠を示している。宗教法人格を失い、税制優遇などが受けられなくなっても、宗教活動はできるのだ。

当然、法を厳しく適用すればするほど宗教界の反発は強くなるだろう。連立政権を組む公明党への遠慮という呪縛から逃れるのも大変だ。衆院小選挙区で公明の関西6議席を食ってしまいそうな勢いの日本維新の会に乗り換えるというなら話は別だが、それでも創価学会や統一教会のみならず、諸々の宗教団体と自民党との関係は深く、一筋縄ではいかない。

できることならそっとしておいて問題の再燃を避けたいというのが岸田首相の本音であろう。支持率低下に歯止めをかけるため統一教会の解散をちらつかせて強い姿勢を示したが、この問題についてのメディアの報道が鎮静化したのを幸いに、様子見を決め込んでいるのではないか。

5月7日に教団の本拠地・韓国で開かれた合同結婚式には日本からの約550人を含め56カ国約2,600人が参加。総工費500億円をかけて建設された巨大かつ豪華絢爛な教団施設「天苑宮」でイベントも行われたという。

どこか及び腰の岸田政権と、変わらず派手な活動を続ける教団本部。メディアの責任は重大だ。「宗教を敵に回すと面倒なことになる」という意識は霞が関だけではなく、メディア界にも蔓延している。みんなで批判するのはいいが、一社だけは御免だという横並び意識が、報道の“沈黙”につながり、岸田首相の“やる気の無さ”を招いているといえないだろうか。

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image by: Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で

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