バルミューダが「酷評スマホ」の新機種断念。何が足りなかったのか?

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バルミューダが2021年11月に発売した「BALMUDA Phone」の後継機種の開発を断念し、携帯電話事業から撤退すると発表しました。参入が遅かったと残念がるのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、いまスマートフォン市場で生き残っているメーカーにあってバルミューダにないモノがあると解説。調理家電をヒットさせた“強み”は「スマホ周り」で生かせるはずと、今後に期待を寄せています。

バルミューダが携帯電話事業からの撤退を発表──為替変動によるコスト高で後継機種開発を断念

5月12日、バルミューダは携帯電話事業を終了させると発表した。2021年11月に発売した「BALMUDA Phone」が最初で最後のスマートフォンになってしまった。社内では後継機種の開発が進められていたようだが、為替変動によりコスト面でも問題が浮上し、商品化を断念したとされる。

BALMUDA Phoneは発表されるや「コレじゃない感」が醸し出されており、ネットを中心にかなり酷評されていた。そもそも、スマートフォンは様々なメーカーがカネとヒトを惜しみなく投入し、開発されている。家電で成功したメーカーが、デザインを工夫し、メーカーに製造をお願いしただけでは、勝ち目はないのは明らかだ。

実際のところ、単に部品を組み合わせてスマートフォンを作っても、市場で生き残っていけないというのは台湾・HTCがいい例だろう。EMS(製造受託企業)から、自社ブランドでスマートフォンを作れても、他社と差別化するのは難しい。

いまスマートフォン市場で生き残っているメーカーは、シャープやソニー、サムスン電子のようにディスプレイやイメージセンサーなど自社やグループ内にデバイス部門が残っているところばかりだ。もちろん、アップルやグーグルは自社でOSを手がけており、さらにチップも作ることで、独自のポジションを築いている。

中国メーカーも、ファーウェイのようにチップを作れる関連会社があったことで、世界的なシェアを拡大していった。OPPOやXiaomiはどちらかといえば、買ってきた部品を組み合わせているメーカーではあるが、中国市場という規模の経済で生き残っている。そんなOPPOでさえ、画像処理のチップを自社で開発しつつある。

バルミューダがもったいないのは、もうちょっと早い時期に参入していれば状況は大きく変わっていたと言うことだ。バルミューダとしては「社長が小さいスマホが欲しいけど売っていないから自分でつくった」ということでBALMUDA Phoneを製品化したようだが、小さいスマホが市場にないということは「作っても売れない」という事に過ぎないのだ。

今週、各キャリアの決算資料を見て思ったのだが、やはりというか、とにかくスマートフォンが売れていない。各社とも昨年度に比べて100~200万台近く出荷台数を落としている。総務省の政策によって「端末は売らなくていい」という風潮があるなか、縮小している市場に小さなメーカーが新規参入するというのは無理がある。

バルミューダにはこれから「スマホ周り」で頑張ってもらいたい。スマホは結局、チップや画面サイズ、解像度などスペックという数値から比較検討されてしまう。しかし、例えばワイヤレスイヤホンであれば、デザインと「聴覚」という体感が重視される。バルミューダは調理家電において「味覚」で差別化したからこそ、成功を収めてきたのだ。

スマホの世界で「五感で戦えるジャンルの製品」であれば、勝てる見込みは十分にあるのではないだろうか。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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