ウクライナへの軍事侵攻により、21世紀最悪の戦争犯罪者に成り下がったプーチン大統領。そんなロシアの独裁者もいよいよ以て最大の窮地に立たされているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナが反転攻勢に向けて開始した「形成作戦」の狙いとその進捗状況を解説。さらにロシア国内でも進む「プーチン大統領の孤立化」という現状を伝えています。
汚職と腐敗にまみれた独裁に絶望。露国内で広がる反プーチンの波
ウ軍は、形成作戦を行っているようだ。ウクライナは、専守防衛ではなく積極防衛であり、ロシア領内への攻撃も加速させている。
形成作戦の1つの目的は、ロシア全体を混乱にして、クーデターなどの体制崩壊を目指すロシア人達を立ち上げらせることである。
そして、もう1つがウ軍は、後方基地の破壊と、突破する地点を見つけて、そこに一点集中攻撃することだ。
このため、ロ軍占領地の後方基地をストームシャドーで攻撃し、ロシア領内には、UJ-22ドローンを用いて攻撃、ベルゴロド州などの国境地域には、自由ロシア軍団やロシア義勇軍団などの親ウ派軍団を侵攻させている。
モスクワ方面
5月30日、32機のドローンがモスクワを目指し、内8機がプーチンが住むモスクワ市の高級住宅街に飛来した。5機を撃墜し、3機を制御不能にしたとロ軍は発表したが、2機はレーニン通り内側で爆発した。
この高級住宅街の近くのフラシハには、戦略ロケット部隊の司令部があり、そこを狙った可能性もある。このドローンは、UJ-22ドローンであり、航続距離は800kmなので、ウクライナ領内から飛ばした可能性が高い。しかし、速度は120Km/hと遅いし、載弾量は20kgと少ない。GPS誘導では、モスクワ近郊はGPSを狂わせる「スプーフィング」があり、誘導方式でも北斗やグローナス誘導の可能性もある。
このドローンをモスクワまでに発見できないということは、ロシア国内での防空体制はスカスカのようだ。S-400などの防空システムを前線に配備しているので、国内では配備がないようである。しかし、ベラルーシ方向からドローンが飛んでくると、敵認識ができなかった可能性がある。
これに先立ち、5月3日には、クレムリンに2機のドローンが到達して、防空体制の強化をプーチンは指示していたにも関わらずに、またしても、ドローン攻撃を受けたことになる。
プーチンは、「ウ軍はテロ攻撃をしてきた」と述べて、報復を示唆したが、大量のミサイルやドローンなどのキーウ攻撃は既に行っているが、ほとんど迎撃されている。核攻撃以外に報復の手段がない。
しかし、このモスクワ攻撃に対して、ポドリャク大統領顧問は「直接の関与をしていない」としている。
しかし、5月24日に前回のドローン攻撃を「ウクライナの特殊軍事部隊か情報部隊が計画した可能性が高い」との複数の米当局者の新たな分析をしたことが報道されている。この秘密工作の背後にいるとみられているのが、キリロ・ブダノフ国防省情報局長である。
自由ロシア軍団のベリヤ・ポノマリョフ氏は、「最終的には、モスクワを解放する」としたように、自由ロシア軍団が関与した可能性はある。そして、ポノマリョフ氏は、「プーチンはキーウに攻撃ができます。なぜウクライナがモスクワを攻撃することがだめなのでしょうか。(このような西側の要望は)愚かであり、偽善的です」と述べている。
モスクワ郊外の蒸留所でも火災があり、モスクワ市内でバスなど32台が火災にあっている。こちらは放火のようである。これにも自由ロシア軍団が関与している可能性がある。
この自由ロシア軍団には、ロシアで数千人の応募があるという。
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