「ロシア軍の分散」という目的を達成したウクライナ
ハルキウ方面
ベルゴロド州ノバヤ・タボルジョンカとシェベキノに親ウ派軍団が5月22日と同様に6月1日にも再度、侵攻した。シェベキノにある市庁舎や電子機器や光電子産業のハイテク用途の合成サファイアを生産するモノクリスタル工場がウクライナ領内からの砲撃で火災になり、行政府は書類を火で燃やすなど占領された後の対応に追われた。
ロシアメディアによると、14人がけが、そのうち4人が重体だという。その後でも、シェベキノで爆発後大規模な火災が発生している。ロ軍集結地に打撃を与えたと親ウ派軍団は言う。
攻撃を受けて、シェベキノの住民は、自動車で避難している。また、ベルゴロド州全体から子供たちの疎開も始めた。
ロ軍は、急遽増援部隊をシェベキノに送り、TOS-1で親ウ派軍団を攻撃し、全滅させたと述べているが、残存住民も巻き添えにしているようで、ウクライナ側が人道回廊を作ると提案している。そして、シェベキノ地区での列車運行が停止している。
しかし、シェベキノとノバタボルジャンカ村で親ウ派軍団はロ軍と活発に衝突しているようだ。
6月1日には、ベルゴロド市でもUJ-22のドローン攻撃を受けている。
クルスク州のカジンカやクリモボでも砲撃があり、SU-34数機が破壊されたようである。
ベルゴロド州では、ウラゾボやソボレフカでも砲撃や侵攻があり、多数の離れた地域に、親ウ派軍団が侵攻しているが、その組織を特定できていない。ロシア領内の反政府組織の可能性もある。
ロシア人も今までは、軍隊だけのヒトゴトであったが、自分ゴトになったことになる。危険が自分の身にも押し寄せるということで不安な状態にした効果は大きい。
しかし、この侵攻に対しても、ポドリャク大統領顧問は「直接の関与をしていない」としている。
頻繁な侵攻をする親ウ派軍団の対応に、ロ軍は、士官候補生200人をベルゴロド州の国境近くに送るとした。
この侵攻目的がロ軍の分散を謀ることであり、目的は達している。
ブダノフ国防省情報局長は、2023年2月24日に、モスクワを含むロシアへの大規模攻撃を計画していたことが、流出した米国の機密文書で明らかになっている。ブダノフ氏は「情報局の総力を結集し、大規模攻撃を準備せよ」と部下に指示したとある。
攻撃対象はモスクワのほか、ロシア黒海艦隊の一部が移動した港湾都市ノボロシスクなどだったというが、その一部が、既に始まったようである。
もしかすると、ロシア国内でもウ軍スパイ部隊の秘密工作が進んでいて、ロシア国内でも味方する人たちが立ち上がる可能性がある。日露戦争時の日本の明石大佐と同じような工作をしているはずである。汚職と腐敗したプーチン政権に絶望している人は多いはずだ。
そして、驚いたことに、ワグナー軍の一部が、親ウ派軍団に参加の意向であるという。今のロ軍幹部や体制に不満であるワグナー軍の兵員のロシア義勇軍への参加はありえる。
プーチンは2日、特定の「悪意ある者」がロシアの不安定化工作を強めているとし、閣僚に対し「いかなる状況下でも」これを許さないよう呼びかけた。ということは、ウ軍スパイ部隊の工作が成功しているということになる。
しかし、米国はロシアの核使用を誘発するので、ロシア本土への攻撃を危惧している。しかし、ブダノフ氏は、「ロシアは、単なる軍事的敗北ではなく国家崩壊を招くことになる核攻撃を行うことはできない」と述べている。
反対に、ロ軍がハルキウ郊外のベゼルに中隊規模の侵入を行った。ウ軍の反撃で、すぐに撤退をしたが、一矢報いるという感じであろうか?
この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ