西側からの武器供与で負けがなくなったウクライナ軍
欧米で訓練された9個旅団がドニプロ市郊外に集結していることは、前回にも述べたが、やっと、突破攻撃地点を定めた可能性がある。ロ軍が攻撃されると思い、準備しているザポリージャ州ではなく、ドネツク州からのようだ。
ということで、マリウポリへの攻撃がメインとなるようである。
6月3日、ゼレンスキー大統領は、「ロシアに対する反転攻勢の準備が整った」と述べた。そろそろ開始のようだ。
このように、戦闘開始が近くなり、ウ軍の報道管制が一段と厳しくなり、何も見えない状態になってきた。ロシアのミルブロガーの情報で、推測するしかないようである。
この中、ゼレンスキー大統領は、モルトバで開かれた欧州連合(EU)の加盟国と非加盟国で構成する「欧州政治共同体」の会合に出席した。
そこで、ゼレンスキー氏は、「ウクライナの(NATO)加盟への明確な招待と、加盟が実現するまでの間の(NATOからの)安全保障が必要となる」と訴えた。
もう1つ、ゼレンスキー氏は、欧州の首相たちと、ウクライナへの新しい防空システムの提供や、F-16戦闘機によるウクライナ人パイロットの訓練について話し合って、多くの供与を得た。
これにより、ウ軍が負けることはなくなったという。パトリオットやF-16、自走砲、歩兵装甲車、戦車も多数得て、その上に大量の弾薬も供与されるようである。軍備の面ではロ軍以上になったことは確かである。
しかし、NATO諸国はウクライナ支援に必要な弾薬が不足している。加盟国は防衛企業とさらに多くの契約を結ぶようストルテンベルグNATO事務総長は求めたようだ。
これに対して、米国は日本にウ軍供与弾薬用火薬の製造を依頼してきた。朝鮮戦争並みの特需が始まるようである。西側諸国は平和の配当で、軍需産業への予算を1990年以降、減らしてきたことで、軍需産業の規模を落としてきた。
このため、一貫して軍需産業を拡大してきたロシアや中国との戦争になると、弾薬不足に陥ることになる。西側全体でもロシア一国に生産量がかなわないことになっていたようだ。
このため、日本まで、火薬の製造を請け負うしかない状態であり、韓国は戦車など、ロシア代替兵器製造で一躍世界に飛躍した。西側の軍需総生産体制になる。
しかし、これにより、世界景気は後退をするはずが、後退にならずに済む可能性が出てきた。戦争経済に世界はシフトしてきたようだ。
ポーランドのモラヴィエツキ首相は「ウクライナでの結果が一つの時代の終わりを決定づけ、ロシアの終焉となるのか、西側文明の黄昏となるのかは我々次第だ」と述べた。西側文明全体の問題である。そして、「この戦争で欧州に新たな地政学的秩序が生まれる」と主張した。
英国のウォレス国防相は、2023年中にクリミアをウ軍は奪還できると述べている。ロ軍の軍備や兵器や弾薬がなくなり、特に5月中に、ロ軍の火砲を490基も破壊したことで、火砲もロ軍になくなりつつあるという。大攻勢の前に前線や後方にある火砲を破壊してくことが、損害を少なくするので、必要なことであるが、これが十分にできているということのようだ。
しかし、心配な点もある。ドイツ国内世論が、かなり潮目が変わってきたことだ。ウクライナへの戦闘機供与、賛成28%、反対64%。ウクライナへの武器供与、やりすぎ37%がちょうどいい43%に迫ってきて、不十分は14%にダウン。外交努力が足りない55%となっている。
ドイツ国民の支援疲れもあると見た方が良い。
このような中、親ロ派的なハンガリーのオルバン首相のウクライナ停戦案は「クリミアは諦めろ、ただしザポリージャ、ヘルソン、ドンバスは全土をウクライナに返せ」とロシアとウクライナに要求しているので、この停戦案であると、マトモである。
少なくとも、後に述べる中国やインドネシアの停戦案よりは良い。マクロン仏大統領も同じ案になる可能性がある。ウクライナも受け入れ可能だとみる。しかし、現時点ではロシアは受け入れない。
このため、この案が有効になるのは、ウ軍が攻勢に出て、少なくともザポリージャ州を奪還する必要があるのでしょうね。しかし、オルバン首相を親ロ派とみていたが、マトモであるようだ。欧州全体もこの停戦案で合意できそうである。
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