広末涼子の“交換日記流出”に苦言。視聴率が取れるならやるテレビの姿勢に有田芳生氏が感じたこと

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連日メディアが報じる、女優・広末涼子(42)と鳥羽周作氏(45)の不倫問題。今回の騒動にメルマガ『有田芳生の「酔醒漫録」』を発行するジャーナリストの有田芳生氏は、広末と鳥羽氏2人だけの交換日記が“世に出たこと”に注目し、過去に世間を賑わせた将棋の中原誠永世十段と林葉直子女流五段の“愛憎テープ流出”騒動と絡めつつ、関係者たちの声から「コンプライアンス」が問題になっていなかった時代と現代のテレビの姿勢の比較、報道の社会的意味について語っています。

広末涼子さんとワイドショー社会

女優の広末涼子さんは私の知人が高校時代の教師をしていた。道を歩いていても気づかれないほど普通の雰囲気だったという。

その広末さんがミシュラン星一つ料理人としてドキュメンタリー映画の主人公にもなった鳥羽周作さんと不倫関係だと『週刊文春』が報じた。有名女優のスキャンダルのため、テレビのワイドショーやスポーツ新聞でも大きく報じてきた。広末さんの夫が会見し、離婚に発展するというので、まだまだ報道は続くのだろう。私たちの暮らしに何の関係もないが、芸能ネタとしては格好の内容だからだ。

いつごろからだろうか、テレビ局でも「コンプライアンス」(法令遵守)というカタカナ言葉が使われるようになり、番組内容への法律的チェックが厳しくなっていった。私が関心を持つのは、テレビ局の姿勢が変わっているかという疑問だ。

「俗情との結託」とは作家の大西巨人の言葉だ。スキャンダルは大衆の「俗情」であり、週刊誌の売れ行きやテレビの視聴率に直結している。テレビのコメンテーターをしていたとき、あるスキャンダル報道に関わったことがある。将棋の中原誠永世十段(既婚)と林葉直子女流五段(独身)の愛憎を『週刊文春』が報じたのは、1996年だった。

「今から突入しまーす」「もしもし?もしもし?私は林葉直子の愛人でしたっつうんで週刊誌に売ります。それではよろしくー。今から突撃!」

「お前みたいなのは早く死んじまえ!」

これは中原名人が林葉直子さんの自宅にある留守番電話に吹き込んだ声だった。『週刊文春』はこの音声を文字起こしして報じた。まだネットがいまのように発展していなかったから、『週刊文春』が音声を配信する時代ではなかったのだ。

私は編集部と懇意にしていたので、編集者を通じて当事者の林葉さんに了解をとって音声を入手した。出演していた『ザ・ワイド』(日本テレビ系)で、連日にわたって音声を報じて話題になった。林葉直子さんにスタジオ出演していただいたこともあった。

中原名人と林葉さんの個人的な会話を、当事者のひとりの了解があったとしても、おそらくいまなら音声は使えなかったという見方がある。「とてもムリですよ」(ワイドショーのスタッフ)というのだ。そこで広末ケースである。当事者2人だけの交換日記や手紙が流出したのだ。

誰が『週刊文春』に渡したのか。それは当人でなければ家族しかいない。

テレビ局の対応を検討する。かつて中原誠名人が林葉直子さんの留守番電話に吹き込んだ音声をテレビは流した。いまのように「コンプライアンス」などが問題になっていない時代だ。

では、いまならどうか。芸能リポーターのヴェテラン石川敏男さんに疑問を聞いた。「いまでも放送したでしょうね。広末の交換日記や手紙も、週刊誌が報じたもので、それが訴えられれば別ですが、いまも昔も視聴率が取れればやりますよ」という。ただし、と石川さんは言う。

「中原さんの音声を放送すれば、藤井聡太の取材はさせませんよ。将棋連盟からそう通告されたら、すぐやめるでしょう。ジャニーズ問題といっしょです。いまは報道していますが、かつては多くのタレントを抱えているジャニー喜多川さんはタブーでしたから」。

名誉毀損が争われるとき、公共性、公益性、真実相当性が課題となる。芸能人のスキャンダルは、訴えられたとき、真実あるいは真実相当性が争点となる。中原名人の音声は被害者の林葉直子さんが公開した。広末涼子さんの手紙類は、本人たちではなく、家族から流出したようだ。だから裁判にはならない。『週刊文春』の顧問弁護士もそう判断しただろう。

この問題に社会的意味はあるのか。広末さんの夫であるキャンドル・ジュンさんの会見をテレビは肯定的に報じた。それを見た女性たちは、彼の行動と発言にモラハラ、支配欲を見てとって否定的な見解を語る人たちも多い。

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