55億ドルも大盤振る舞い。ウクライナへの支援継続は日本の国益になりうるのか?

2023.07.20
 

ロシアの戦略転換で長期化必至のウクライナ支援

しかし、ウクライナ情勢では今日、どこまで支援すればいいのかという限界説も聞かれる。それは、今日のロシアの軍事戦略から考えられる。日本が行ってきたこれまでの支援とウクライナ支援が大きく異なるのは、それが戦争被害による支援かどうかにある。当然だが、ロシアがウクライナに侵攻していなければ、冒頭で紹介したような支援は絶対になかったはずだ。

そして、長期間に渡って軍事的劣勢に立たされるロシアは今日、勝つ戦争(当初プーチンが描いていた首都キーウを掌握し、ゼレンスキー政権を崩壊させ、親ロシア政権を立ち上げる)をあきらめ、負けない戦争(劣勢の中でも今支配している領域を最大限、長期間にわたって死守し、ウクライナに諦めさせそこで休戦とする)に舵を切っている。そうなれば、侵攻前の状態まで回帰することは難しく、戦闘や緊張は長期的に続くことが避けられない。

そうなれば、日本のウクライナ支援も長期的なものになる。しかし、日本の財政にも限界があり、どこまでウクライナを支援するべきかという議論が強くなってくるだろう。しかも、日本はウクライナ以上に大きな脅威を抱えており、台湾有事などが勃発すれば、ウクライナへの関心はすぐに薄れ、ウクライナ支援もすぐに停止となるだろう。今後は、ウクライナ支援継続は日本の国益になるのかという議論が大きくなることは間違いない。

image by: 首相官邸

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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