55億ドルも大盤振る舞い。ウクライナへの支援継続は日本の国益になりうるのか?

2023.07.20
az20230719
 

兵器や弾薬の供与こそ行っていないものの、今や世界有数の「ウクライナ支援国」である日本。その是非を巡っては国民の間に賛否両論が渦巻いていますが、はたしてウクライナ支援は我が国の国益に叶うものなのでしょうか。国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、海外支援が果たす役割や重要性を詳しく解説。その上で、日本のウクライナ支援について自身の見解を記しています。

ウクライナ支援継続は本当に「日本の国益」になるのか?

ウクライナ戦争では一向に解決の兆しが見えないでいる。今年2月の時点の情報になるが、日本政府はこれまでにウクライナ経済の再建のために6億ドル、緊急無償資金協力などの人道支援に4億ドルなど合計で15億ドルの支援を表明し、実行している。

人道支援では避難民を受け入れている周辺国やウクライナに対し、医薬品や食糧など生活必需品を国際機関や日本のNGOを通じて提供し、停電やそれに由来する交通事故を念頭に、発電機300台、太陽光で充電できるソーラーランタン8万3,500台、反射材付きのベスト2万着、リストバンドタイプの反射材16万個など積極的に支援を行っている。

さらに、軍事面では自衛隊の防弾チョッキやヘルメット、化学兵器に対応した防護マスクや防護服、また地雷や不発弾の除去を進めるため地雷探知機4台の提供が発表されるなど、日本は多方面で積極的にウクライナ支援を行っている。岸田総理大臣は最近新たに55億ドルの追加支援を行うことを表明しており、日本は世界でも有数のウクライナ支援国と言えよう。

しかし、日本国内でも昨今の九州における壊滅的な豪雨被害のように、日本世論では“日本が大変なのに海外にカネをぶちまける時か!”と岸田総理への不満や怒りの声が少なくない。確かに、一般市民の中で何億、何十億という国民の税金が海外に流出しても、それがどのように使用されたのか、将来的にどのように日本に利益として還元されるのかを一般的に把握することは難しく、国民とすれば単にカネが外へ流れる程度にしか理解が及ばないだろう。

欧米の支援で戦後復興を果たした日本

一方、海外支援は極めて重要との考えもある。実際、日本も海外支援によって今の姿がある。戦後の焼け野原となった日本は、政治的にも経済的にもゼロからの再出発となった。その当時、日本の経済力はインドネシアやフィリピンなどより貧しかったとの指摘もある。

戦後、日本は欧米からの経済支援もあり、急速に経済復興を進め、高度経済成長を経験し、いつの間にか米国に匹敵する経済大国の地位まで上りつめた。これほどの経済成長をこのスパンで成功させた国は世界にも類はない。日本の交通の心臓となっている東海道新幹線も、実は欧米からの経済協力によって建設されたものだ。歴史を辿れば、海外支援がその国の運命を左右する場合があるのだ。

今後頼りになる日本が支援してきた国々

そして、海外支援を積極的に行っていけば、その分それによって経済成長を遂げた国と日本との関係はより強固なものになる。日本は長年、東南アジアや南アジア、アフリカなど多くの国々に積極的な経済支援、人道支援を行ってきたが、グローバルサウスの存在感が世界で強まるように、日本が支援を継続してきた国々による経済成長が近年著しい。

人口減少や労働力の確保に悩む日本としては、今後そういった国々から労働力を支援してもらえる可能性が高く、また今後日本が経済的に落ち込み、台湾有事など米中による戦争に巻き込まれた場合も、多くの国が日本を支援することになろう。人間の心理として、自分が苦しい時に支えてくれた人には感謝が深く、日本としては自らが落ち込んだ際、今度は頼む!という形でこれまで海外支援を積極的に行ってきた。

print
いま読まれてます

  • 55億ドルも大盤振る舞い。ウクライナへの支援継続は日本の国益になりうるのか?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け