受験競争の弊害?今こそ思い出したい松下幸之助の教え“雑用”の重要性

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日本を代表する経営者・松下幸之助。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、そんな氏の薫陶を受けた2人の対談を紹介。今失われた、かつて日本が誇った勤労観、仕事観とは?

日本が誇った勤労観、仕事観

創業した松下電器産業を一代で世界的企業に育て上げた松下幸之助。その薫陶を受け、松下の経営哲学を広く世に伝える活動に邁進しているのが、松下電器産業本社企画室に勤務し、現在は「中塾」代表の中 博さんです。

中さんが若き日を思い起こして熱く語る松下幸之助の教え、そしていまこそ取り戻すべき仕事観、勤労観とは。対談のお相手は、同じく松下幸之助の謦咳に接し、松下政経塾初代塾頭を務めた上甲 晃さんです。

上甲 「いまの日本では、松下幸之助が説いた教えや考え方がどんどん失われていっているように思うんです。

例えば、今年の1月に中央教育審議会が出した答申を見てみると、学校の先生の仕事の負担を減らすために、掃除などの雑用は外注の業者やボランティア団体に任せればいいと書いてある。

これは松下幸之助の考え方、仕事観とは根本的に違うんです」

中 「まさに正反対ですよね」

上甲 「それで思い出したのが、松下幸之助が松下政経塾の塾生に言った言葉です。松下幸之助は松下政経塾に来るたびに、『君らが立派な指導者になる第一の勉強は掃除や。朝起きたらしっかり掃除しいや』といつも言っていたのですが、塾生は『掃除なんて雑用をしている暇はない』と反発していました。その時に、松下幸之助は塾生を次のように諭したんです。

『君ら、日本の掃除をする前に、身の回りの掃除をせえ。身の回りの掃除ができない人間に、どうして日本の掃除ができるんや』

いまの政治家や教育者には、どうしてそうした考え方、仕事観がないのだろうかと私は残念に思います。おそらく、あまりにも受験競争が激しくなりすぎて、偏差値と学歴に直接繋がること以外は雑用、邪魔とみなしてしまう価値観になってしまったのでしょう。

経営者意識、主人公意識をもって取り組めば、何事も自分を成長させる天職になるんです。掃除でもなんでも、十把一絡げに雑用だとみなしてしまう考え方が経営者や教育を司る人の中にあるというのはね、基本的に何かが間違っているんだと私は思いますよ」

中 「私も上甲さんと同じような思いがあります。本社企画室に配属された時に、最初の挨拶に行くでしょう。そうしたら、上司や先輩が私たちの顔を見てね、『君らは、ええ学校出て、ええ頭しとる。そやけどな、そういうやつほど、きちっと綺麗に掃除をして、仕事せえへんからな』と言うわけです。

それで、企画室で働くようになってびっくりしたのは、朝出社したら皆の机の上に資料やファイル一つ置かれてないんです。企画室は日々膨大なデータを扱いますから、業務中は資料や原稿用紙だらけなんですが、皆、綺麗に机を掃除して帰っていたと。上場している大会社でそんな職場はいまでも見たことありません。

だから、松下電器の強さの源泉は、戦術・戦略ではなく、どんな些細なこと、雑用でも人として大事なことはしっかりやる、社員一人ひとりの人間力なんですね。

これからの日本企業はもう一度その原点に立ち戻って、人としての本筋をきちんと身につけた人材を育てていく必要があると思います。松下幸之助は、お金ありきの経営ではいかん、儲けは自分たちの人間力で社会や人々に貢献した結果ついてくるんだと言っています。でも、いまはそれが全く逆になってしまっていますよ」

image by:Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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