「まるで漂流者みたい」日本の高齢者たちから自由を奪う、介護施設の“徹底監視”

 

…管理か? それとも自由か? 施設にとって転倒による骨折や、誤嚥による誤嚥性肺炎は、命につながる問題なので、どうしたって神経質になる。女性が指摘するとおり、どんなに介護スタッフが「本人の自由」を尊重したところで、事故が起これば家族は騒ぎ立てます。

「見守りカメラ」は事故を未然に防ぐ手立ての一つになるかもしれません。しかし、管理より大切なのは、たとえ転んでも骨折や怪我につながらないようにする足腰のリハビリの徹底です。

実際、デンマークなどでは「リエイブルメント(Re-ablement、再び自分でできるようにする)」を根幹とする高齢者対策を徹底し、すべての地方自治体に高齢者へのリハビリ実施を義務付けています(重度で複雑な機能低下のある高齢者も含む)。

80歳以上の人たち全員を対象に「何も起きていなくても訪問する」という予防的な自宅訪問を実施しているのです。

その背景にあるのが「人は最後まで自分のことは自分でやりたい」という価値観の共有です。

「高齢者=ケアをされる人」ではなく、「人(高齢者を含む)=自分で決めたい」という人間の本性を尊重し、そのために必要なことは何か?何をすれば自分で決めらるのか?を、国民の一人一人が考えた結果としての高齢者対策が実現されているのです。

日本は超高齢社会とどう向き合っているのか? これからどう向き合おうとしているのか? 日本が人生の最終章で、大切にする価値観とは何か?

超高齢社会のトップランナーとしての「日本の介護」のあり方に、世界中の国々は注目しています。管理か? 自由か? 自由を担保するには、何が必要で、どこまでの自由なら許されるのか? という大きな視点で、見守りカメラについても議論を進めてほしいです。

みなさんのご意見、お聞かせください。

この記事の著者・河合薫さんのメルマガ

初月無料で読む

image by : Shutterstock.com

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 「まるで漂流者みたい」日本の高齢者たちから自由を奪う、介護施設の“徹底監視”
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け