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ファーウェイの追撃をかわしてシェア第1位

「imoo(アイモー)」が、小天才の子ども用スマートウォッチの国際ブランド名です。調査会社Counterpointによると、このimooが2023年第1四半期の中国スマートウォッチ市場の出荷シェアで第1位、約35%を占めています。

現在は、2位のファーウェイ(約15%)が子ども用スマートウォッチでも素晴らしい製品を投入してきたため、シェアが割れていますが、2021年ぐらいまでは60%を超える圧倒的なシェアでした。子ども用ではなく全体の世界スマートウォッチ市場でも1位がアップル、2位がファーウェイ、3位がimooとなっていたほどです。

このような子ども用スマートウォッチは、中国では2013年から発売されています。SIMを内蔵し、家族と通話/メッセージが交換でき、GPSが内蔵され、親に居場所が通知されるというものです。

歩歩高では、このような情勢を見て、2015年に参入を決め、市場調査を行いました。ここで面白い事実が見つかりました。親のニーズは「子どもの現在地が確認できること」でした。ところが、利用をする子どものニーズは「友だちとメッセージ交換がしたい」というものだったのです。

子ども用商品は、使うのは子どもでも、購入をするのは親です。そのため、二重のニーズが存在し、これをいかに実現していくのかが、商品設計のポイントになりました。

親と子、2つの異なるニーズを満たす商品づくり

歩歩高は、子どもたちのニーズを満たすために、専用のSNS「微聊」(ウェイリャオ)を開発しました。ただし、WeChatのように、誰とでも友人になり、話ができるようになってしまうと親としては心配になります。そこで、友人になれる人を限定する設計にしました。

まず、親とつながる方法です。親は「微聊」のスマホアプリをインストールし、子どもは微聊の登録用のアプリを小天才にインストールしなければなりません。それぞれにアプリをインストールしなければならず、面倒なようですが、これはわざと面倒にしています。小天才の登録用アプリを起動するとQRコードが表示されるので、これをスマホ側でスキャンすると、スマホの微聊と小天才がつながり、メッセージが交換できるようになります。

登録用のアプリを消してしまえば、もう簡単には他のスマホとつながることはできません。つながるには再度登録用アプリをインストールする必要があります。つまり、悪意のある大人がつながろうとしても、手順が面倒であるために、子どもに考え直す時間を与えることができるのです。さらに、親が不安な場合は、小天才をアプリダウンロード禁止の設定にしておけば、リスクをほとんどゼロにすることも可能です。

では、小天才を持った子どもたち同士がつながるにはどうしたらいいでしょうか。Bluetoothで小天才同士を近づけるとつながることができます。うまいのは、ただ近づけるだけでいいのに、つながるポーズを決め、それを盛んに宣伝したことです。子ども同士が高く腕をあげて、小天才同士を接触させるように近づけます。なかなか子どもにとってはかっこいポーズです。

この閉じたSNSというのが、非常に大きな意味を持ちました。小天才以外のスマートウォッチではつながることができないため、多くの子どもが小天才を欲しがるのです。ファーウェイは微信(ウェイシン、WeChat)のサブセット版を搭載して、やはり閉じたSNSを搭載していますが、先に小天才が普及をしてしまったため、ファーウェイといえどもシェアを伸ばすのに苦労をしています。

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