アジア版NATOは同盟ではなく傀儡。対米従属と中国敵視で日本は自滅する

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ワシントン郊外の大統領専用別荘「キャンプデービッド」で行われ、3カ国間の強い連携を示した日米韓首脳会談。しかしこうした日本政府のアメリカ追従姿勢は、我が国を良からぬ方向に導く愚策との見方も囁かれています。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、バイデン政権の主導で進む「アジア版NATO結成」が日本に自滅をもたらすとして、その理由を解説。欧州各国の悪しき先例を挙げつつ、対米従属の危険性を説いています。

日米韓豪の中国敵視は茶番から自滅に

8月18日に日米韓の首脳が米キャンプデービッドで開いたサミットは、3か国が結束して中国の台頭・脅威に対抗する決意を示す意味があったと喧伝されている。だが、会合で取り決めた声明文(キャンプデービッド精神)を見ていくと、中国の「脅威」「悪さ」についての十分な指摘すらできていないことがわかる。

ちまたでは、いずれ米中が台湾をめぐって戦争し、日豪など同盟諸国も巻き込まれるという「予測」が飛び交っている。だが、日米韓は今回の声明文で「台湾に関する我々の基本的な立場(台湾が中国の一部であるという中共の認識を日米韓が理解・尊重。一つの中国の尊重)に変更はなく、我々は両岸問題の平和的な解決を促す」と明言している。

日米韓首脳共同声明「キャンプ・デービッドの精神」
U.S., Japan, South Korea alliance sends clear message to China

米国は1978年に中共を国家承認して以来、台湾が中国の一部であることを一貫して認めている(米中共同声明)。この間、台湾が中国から分離独立する流れを米国が肯定したことはない。対米従属の日韓も、米国と同じ姿勢だ。

その一方で米国は、台湾軍に戦闘機の部品を供給したり、数十人規模の米軍を軍事顧問として駐留している。これは、米国が中共を国家承認する前にやっていた中華民国(台湾)への軍事支援の名残りであるが、米国はこれを対中挑発としてやっている。

中共はこれを共同声明違反として怒り、正当防衛として中国軍が台湾近海で軍事演習をする。米日のマスコミなどは、米国の共同声明違反の部分をわざと無視して「中国が藪から棒に台湾に侵攻しようとしている」と歪曲喧伝する。藪から棒ではない。米国が煽ったのでこうなっている。

The Spirit of Camp David

現実論として、米国が台湾への軍事支援をさらに増やすには米中共同声明を放棄せねばならない。だが今回の日米韓の声明文には、米中共同声明と同じ「台湾が中国の一部であるという認識」が盛り込まれている。

台湾をめぐる米国の扇動は今後も続き、一触即発っぽい感じが醸成され続ける。日本などの人々は騙され続ける。台湾の人々はかわいそう。しかし、米中戦争にはならない。その流れが、今回の米日韓の声明文で再確認された。

日韓は、米国に守ってもらっているので、仕方なく米国主導の中国敵視に付き合っている。日韓政府の本音は、大きな貿易相手である中国と対立したくない。その本音にそって日韓が米国に頼んで、声明文に「一つの中国の原則を尊重します」と盛り込んだのだろう。

U.S. seeks to bring Japan and South Korea closer with eye on China

今回の声明文では、台湾問題でなく南シナ海問題で、中国の軍事行動を「危険かつ攻撃的」と名指しで非難している。南シナ海問題で中国と対立するASEAN諸国と日米韓との協調関係を強化することが盛り込まれている。「名指し非難が画期的」と喧伝されている。

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