「プーチン孤立」説は本当か?国連の加盟国中3割以上が“ロシア寄り”という事実

 

国連加盟の33%の国々が見せるロシア寄りの姿勢

中東諸国やアフリカ、南アジアなどではまだまだロシアの影響力は強く、ウクライナ侵攻の後でも拡大傾向にあると言われていますが、旧ソ連の共和国で、かつプーチン大統領が目指す“大ロシア帝国の再興”のパズルの駒になるはずのスタン系諸国(カザフスタンやウズベキスタンなど)が挙って欧米諸国への接近を進めていることで、仮にロシアに有利な形でウクライナ侵攻が一段落したとしても、かつてのような大ロシア勢力圏は戻ってはこないと思われます。

そして中央アジア諸国が、ロシアによるウクライナ侵攻に対して距離を置く理由は「次は我が身」という恐れによるものより、「もともとロシア、ウクライナ、ベラルーシは不可分の兄弟姉妹のようなものであり、この紛争も内輪もめに過ぎない」という、他国とは違った見方をしているからだと考えられます(そして、限りなく現実的な認識だと思われます)。

とはいえ、ロシアがいつ自国に牙をむいてくるかわからないという恐れはあるため、ウクライナがNATOやEUへの加盟を模索するように、スタン系の国々も欧米諸国を対ロバランサーとしての存在に据えようとしています。

ただ、スタン系の国々もウクライナに加担する気はなく、淡々と自国の安全保障のための外交的な画策を行っています。中国との関係強化もその一例ですし、欧米との協力関係の格上げも同じです。

それは先述のアルメニアも同じで、欧米諸国、特に対ロ・対トルコを見越したアメリカとの協力を強化しようとしています。

このようにロシアは次第に自国周辺における勢力圏を失いつつありますが、果たしてロシア、そしてプーチン大統領は追い詰められ、孤立を深めているのでしょうか?

その答えはクリアカットには出てきません。

ウクライナ侵攻の強硬と苦戦は確実に影響力を奪っていますし、今回の対ウクライナ戦争においてロシアが苦戦する姿を晒すことで、これまで強大な力をベースに周辺国を抑え、かつ旧ソ連圏の盟主として振舞ってきたメッキがはがれていることは確かです。それが先ほど触れた近隣国のロシア離れに繋がっています。

しかし、ロシアの国際情勢における影響力はさほど下がっていないと思われます。特にロシア支持の傾向は、途上国で高まっており、EIU(Economist Intelligence Unit)の統計によると、ロシアによるウクライナ侵攻後も着実にロシアへの親近感が向上していることが分かります。特に中東、アフリカ、南アジアでの親ロシア感情の高まりは、ウクライナ侵攻以降のAntiロシアの風潮を目にしている私たちには理解しがたい状況です。

EIUによると、国連加盟国中、33%の国々はロシア支持かロシアにシンパシーを感じていると回答しており、それはロシア非難を行い、対ロ制裁を行う32%の国々に匹敵する割合になっています(残りは立場を明らかにせず、ウクライナ情勢からは距離を置いています)。

この状況から見えるのは、ロシアによるウクライナ侵攻から574日(9月21日で)が経った現在において、国際社会の分断はほぼ固定化され、ブロック化されているため、国連型国際協調の構図は描きづらくなっているという現実です。

その分断のコアにはロシアがいて、中国が存在します。そして中ロが推し進める国家資本主義体制に加わる国や、中ロとは微妙な緊張関係にありつつも、実利に基づいて中ロとも手を結ぶことを厭わないグローバルサウスの国々がそのコアを取り巻く構図があります。

そして別の場所に欧米諸国とその仲間たちの輪が存在し、それは、実態は別としても“自由民主主義体制”という旗印のもとに団結しています。

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