「プーチン孤立」説は本当か?国連の加盟国中3割以上が“ロシア寄り”という事実

 

国際協調体制の灯火を再び輝かせる先頭に立つべき日本

欧州各国については英国も、ドイツも、フランスも、イタリアも、すでに方針の転換が始まっており、口頭で宣言されている対ウクライナ支援の継続と拡大も、実質的には絵に描いた餅になる恐れが高まっています。

アメリカ国防省の分析では、ロシアとウクライナの攻防は長期化・泥沼化が必至で、現在の戦い方が続く限り、何らかのブレークスルーが起こるとしても2025年以降になるとの見通しが示されています。

ここには、もちろんロシアが核兵器を用いず、NATOが戦争に直接的に巻き込まれないという大前提が存在しますが、ロシアおよびプーチン大統領の“孤立”が進み、国内の過激派が勢力を増すにつれ、ロシアによる核兵器の使用を含む軍部の暴走の可能性も高まるという分析も増えてきていることは決して無視できない脅威だと考えます。

一部にロシア国内でのクーデターや内戦の可能性を指摘する情報もありますが、神通力が劣ってきていると言われていても、プーチン大統領が存命で権力の座についている限りにおいては、混乱は起きても、それがロシアの崩壊につながり、そして自動的に対ウクライナ戦争が終結するという事態には至らないと考えます。

戦争は続き、多くの人たちが傷つき、そしてロシア・ウクライナはもちろん、物理的・経済的な疲弊はどんどん波のように周辺に波及し、それが国際経済を蝕み、私たちの心理をネガティブな方向に振り、uncontrollableな状態に導く可能性が指摘され始めています。

国連安保理でのゼレンスキー大統領の演説において、国連改革と常任理事国システムの見直しなどが提唱されましたが、それは残念ながら総会マターではなく、安保理マターであり、当事者のロシアが常任理事国を務める現実から、安保理における手続き条項にかかる案件には確実に拒否権が発動されるため、ロシアが自ら国連を脱退するという暴挙に出ない限りは、実現することはありません。

分断は深化し、世界各地で見向きもされてこなかった様々な紛争の種が一斉に芽を出し、大混乱が訪れることになってしまうかもしれません。

私が国連で紛争調停官を務めたころにも分断は存在しましたが、その頃には国際的な問題を、UNを通じて皆で協力して解決しようという思想と動きが強く存在していました。

今、UNの外から国際情勢を見つめ、直に関わってみると、その“協調の時代”は、しばらくの間は戻ってこない気がしています。そしてその象徴であるはずの国連UNの存在意義も、存在の仕方も、急ぎ再検討される時期がやってくるように感じます。

日本の岸田総理は国連で行われた様々な会合において、協調の大事さと核なき世界に向けた国際的な歩みの強化の重要性を説きました。今年、中間年を迎えるSDGsの首脳級会合や気候変動問題に関する首脳級会合にも出席し、“あるべき世界観”について触れました。

今、UN不要論が強まってくる中、これまでのように少し遠慮した立ち位置から、もっと前面に旗振り役として躍り出て、国際協調体制の最後の灯火を再度、煌々と輝かせる先頭に立つリーダーシップを発揮してもらいたいと願います。

できるかどうかは分かりませんが、今こそ、戦後のジレンマから脱却し、真の国際社会のリーダーになるために、リーダーシップを発揮すべく脱皮してもらいたいと思います。

ポスト・ウクライナの世界が存在するのであれば、国際協調の下に成り立つ世界にするために本気を出してみませんか?

そんな夢を見たくなる今週の国際情勢の裏側でした。

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