「プーチン孤立」説は本当か?国連の加盟国中3割以上が“ロシア寄り”という事実

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ロシアによるウクライナ侵攻は言うに及ばず、世界各地で発生する紛争や止まらぬ人権侵害を解決することができずにいる国際社会。国連や安保理の機能不全が叫ばれていますが、もはや国際協調の時代に戻ることは不可能なのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、分断がほぼ固定化されブロック化が進む世界の現状を詳しく解説。その上で、自身が国際交渉人として日本政府に期待すべき役割を提示しています。

もう戻らない世界協調の時代。分断が固定化された国際社会

「国連安全保障理事会がウクライナの問題を取り上げ、支援について話し合うように、世界が直面する気候変動の脅威に対して国連はもっと関心を示し、コミットメントを高めるべきだ。ウクライナにおいてかけがえのない生命が奪われている現実に心を痛めるが、気候変動による自然災害により、より多くの人の生命が世界中で奪われ続けている。国連は本気でグローバルな問題に目を向け、真剣かつ迅速に対応しなくてはならない」

これは9月19日にUNで開催された気候変動対策についての首脳級会合で、バルバドスのミア・モトリー首相が訴えかけた内容です。

この発言を聞いたとき、正直驚くと同時に、国際情勢における関心の潮流が変わったことを実感しました。

ロシアによるウクライナ侵攻が勃発した際、バルバドスを含む多くの国々はロシアによる蛮行を非難し、ウクライナの人々に思いを寄せる姿勢を明確にしましたが、侵攻から1年半以上が経ち、戦況が膠着化する中、ロシア・ウクライナ双方による破壊と、欧米諸国とその仲間たちが課す対ロ制裁の副作用が、途上国を苦しめている状況に直面すると、報道されている内容とは違い、その他大勢の国々の関心はウクライナ問題から離れていることが分かります。

そして同時に途上国を中心に広がる国連および先進国への焦りと怒り、そして苛立ちも明確になってきました。

“正義のために”という名目の下、欧米諸国とその仲間たちは湯水のようにウクライナに資金提供を申し出て、継続的な支援を約束していますが、世界レベルで深刻化する気候変動問題や、スーダンにおける内戦と国民的な悲劇、ミャンマー情勢、アフガニスタン情勢をはじめとする多くの国際問題に対して及び腰または無関心を装う国連と欧米諸国とその仲間たちへの不満が爆発し始めています。

ブラジルのルーラ大統領も「ロシアによるウクライナ侵攻は看過できない蛮行であると考えるが、ウクライナにも負うところはあるはずだ。世界はあまりにもウクライナ問題に関与しすぎ、本当に助けを必要とする大多数の人々から目を背けていないだろうか」と自省も込めて発言していますし、グローバルサウスの軸を務めるインドのモディ首相も、他の国々と共に、国際問題に対して積極的に関与することを発言しています。

欧米諸国とその仲間たちが何もしていないかというと語弊がありますが、ウクライナに対する熱狂(とはいえ、日ごとに冷めてきている気がしますが)に比べて、スーダンの問題やエチオピアでのティグレイ問題、ミャンマー情勢やアフガニスタン情勢に対するコミットメントへの熱情を感じることができません。

実際、国連の人権高等弁務官であるヴォルカ─・ターク氏も、人道支援を統括するマーティン・グリフィス事務次長も、国連安全保障理事会の場で「スーダンの惨状について報告し、その際、安保理の実質的な機能マヒにより、スーダンの人々に対する人道的支援が停止しており、スーダンはすでに国際社会から見放されている」という厳しい指摘がされていますが、安保理常任理事国の完全なるスプリットの影響を受けて、何一つ効果的な策を講じることが出来ていません。

かつて国連安全保障理事会のお仕事もしていた身としては、非常に残念であり、強烈に懸念を抱く事態になっています。

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