10月10日、ネットワーク品質の低下を指摘されているNTTドコモが、品質改善に関して説明会を開催。配信でその模様をチェックして、「後出しジャンケンで負けている」と厳しい評価を下すのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんです。以前ソフトバンクが説明した、品質維持・向上のための取り組みを研究したとは思えないドコモの報告に半ば呆れながら、利用者が不満を抱く感覚やポイントを理解していないと、ダメ出ししています。
ドコモのネットワーク品質、ソフトバンクを見習うべき
NTTドコモが10月10日、ネットワーク品質改善に関する説明会を開催した。残念ながら今週はAdobe MAXの取材でアメリカ・ロサンゼルスにいたため、リアルでの参加ができなかった。NTTドコモではオンライン配信しないということであったが、ライターの中山さんがYouTube Liveで配信してくれたおかげで、リアルタイムにチェックすることができた(その後、囲みの様子も中山さんの動画で確認)。
詳しいことはCNETに掲載の記事に譲るが、個人的な感想としては「なぜ、このタイミングにやったのか。もっとソフトバンクの説明会を研究すべきではなかった」という点に尽きる。
9月19日にソフトバンクがネットワークの品質維持に関する説明会を実施。その際に「アプリに内蔵されたビッグデータによって品質改善につなげている」「4Gと5Gのベストマッチング」「スループットではなく体感速度」といった、わかりやすいキーワードで記者に対して、ソフトバンクのネットワーク品質維持、向上の取り組みを説明していた。
特に「スループットではなく体感速度」とソフトバンクが説明しているのに対して、NTTドコモは、各エリアのスループット速度を上げて「不満なく使える状態」と胸を張ったのだ。確かにスループットはわかりやすい数字ではあるが、誰もがみんな速度測定アプリを使うわけでもなければ、4K動画を見まくるというわけではない。
「ヤフーを見ようと思ったらデータが遅い」とか「SNSの画像がすぐに表示されない」「YouTubeでサムネイルをタッチしても、すぐに動画が流れてこない」というちょっとしたストレスが積もり積もって「NTTドコモはつながらない」というSNSの声になっているのだ。
単にNTTドコモが「スループットが改善した」といっても、ソフトバンクが「スループットは意味が無い」と言い切っているだけに、両方の説明会に参加した記者からすれば「NTTドコモ、何を言っちゃっているのだろう」という気になってくるのだ。
ビッグデータに関しても、ソフトバンクはiPhoneが出た直後からやっているのに対して、NTTドコモは速度測定アプリのデータのみを参考にしている。
衛星「ワイドスター」によって、日本全域をエリア化済みといっても、専用のデバイスが必要だし、そのデバイスがWi-Fiを吹かなければ周りでは使えない。KDDIがスターリンクを導入する対抗意識を出しているのか知れないが、ユーザーの実用性にはほど遠いアピールでしかないのに何故気がつかないのか。
このタイミングで説明会を実施したのはどちらかといえば「墓穴」を掘った感じがするし、仮にやるのであれば、もっとソフトバンクの説明会を徹底的に研究して、対抗できるだけのネタ、主張を用意すべきだろう。
結局、ソフトバンクが出してきたグラフにはかなわないわけで、NTTドコモとしてはソフトバンクに泥を塗られ、後出しじゃんけんで負けただけの説明会に終わってしまった感がある。
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