日本保守党お祭りムードの「Hanada」で、ひとり気を吐く人物
さて、そんな日本保守党お祭りムードの「Hanada」で、ひとり気を吐く人物がいた。
文芸評論家の小川榮太郎だ。
小川は、かつて、安倍晋三擁護のために「Hanada」の版元である飛鳥新社から、「森友・加計学園事件は、朝日新聞による捏造。戦後最大級の報道犯罪だ」という内容のウソを書きまくった本を出版。
これを自民党が大量購入して議員に配布していたのは有名な話で、小川は、朝日から訴えられ、東京高裁が14カ所の名誉毀損を認定、朝日側の主張をほぼ認める形で判決が確定している。
その後も安倍擁護街道をひた走る小川は、安倍と統一協会に特別な関係があったという話を「フェイクニュース」「歴史の改竄」などと主張、「安倍の言動が中国を刺激したために暗殺につながった」というような陰謀論を「Hanada」誌上で展開した。
そんな小川が、現在なにを主張しているのかと言うと──。
「岸田叩きの先は小石河連合政権という悪夢」なる論考だ。
「小石河連合」とは、自民党内の非主流派で、反安倍路線だった小泉進次郎、石破茂、河野太郎の3人の頭文字をとったもの。
小川は、安倍亡き不安定な自民党において、岸田を叩いて退陣させれば政局が揺らいでしまい、安倍の力で党内野党として抑え込まれていた小石河の3人が政権に躍り出てしまう、だって彼らは国民に人気があるのだからと主張。
「安倍晋三は愛しているけど、岸田文雄なんて大嫌い」というアンチ自民党の日本保守党勢とは完全に袂を分かち、岸田叩きを批判している。
可笑しいのは、日本保守党勢は、「安倍さんを愛してる。安倍さんがいなくなってから、岸田が勝手に増税や移民政策を推し進め、LGBT法まで成立させやがって!」と主張しているのだが、それに反論する小川は、「安倍さんを愛してる。そして岸田さんは、安倍さんの政策を忠実に推し進めている素晴らしい首相だ!」とその業績を褒めちぎっていることである。
褒められたものかは別として、そもそも増税も外国人労働者の受け入れ緩和も、安倍がやったことなのだから、小川もまったくのデタラメではない。
「たくさん稼いだので小説家としては引退して政党やります」という百田尚樹とは少々事情が異なり、「安倍は素晴らしい」を力いっぱい喧伝する本を売って生きてきた小川榮太郎の場合、さすがにエキセントリックな手のひら返しには乗れないのかもしれない。
ただ、小川が、岸田の素晴らしさとして、いの一番に挙げたのが、「安倍の国葬儀の即決」だというから、ズッコケた。なんだそれは。
どちらも、「アベガ、スキダカラアァァァ!」という持ちでは一致していて、いつまでも未練タラタラ忘れられずにいるところは同じだが、こんな支離滅裂な分裂を迎えることになるとは……。
小川によれば、安倍は河野太郎を外務大臣、防衛大臣と要職に就けたものの、その仕事ぶりを見て「危険な政治家」と見なすようになり、「河野さんだけは総理にしてはならない」と話していたという。
たしかにコロナワクチン接種に対する強硬な姿勢、熟慮しない拙速さ、独善的で自分に対する異論を「デマ」と断言してシャットアウトする様子には、独裁者の片鱗を感じさせ、つくづく危険な政治家だと思った。
だが、小川の懸念は、河野が女系天皇を容認し、長子優先の皇位継承を提言していることと、脱原発を目指していることの2点だというので、まったく話にならない。
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