自浄作用なき自民が国民の間に広げる絶望的な政治不信
細田議長の辞任表明会見が行われたのと同じ10月13日、政府は世界平和統一家庭連合(統一教会)の解散命令請求を東京地裁に申し立てた。これ自体は当然のことで、裁判所の賢明な判断を待ちたいが、岸田首相のやるべきことはまだ残っている。
政治の責任について、自民党は何ら答えを出していない。すべて統一教会のせいにして、自分たちの責任を回避しようとしているのだとしたら、由々しきことである。
これまで自民党は、統一教会との間に「組織的関係はない」とシラを切り、安倍元首相と細田氏を対象から外したおざなりの自己申告調査をしただけですませてきた。しかし、自民党のタカ派と岸信介氏以来の深い関係を持つ統一教会が、清和会の支援団体とみられてきたことは、知る人ぞ知る事実だ。
教団の政界工作により、霊感商法に対する警察の捜査は打ち切られ、第二次安倍政権では、悪名の知れ渡った「世界基督教統一神霊協会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更が認められている。そのために、教団が正体を隠して信者を増やすことが容易になり、被害の拡大につながった。
細田氏だけではない。東京・八王子の統一教会施設をしばしば訪れていた萩生田政調会長、文科相時代に教団の名称変更を認めた下村博文氏、ナイジェリアやネパールでの教会関連団体のイベントに参加した山際大志郎氏ら、説明責任から逃げ切りをはかろうとしている政治家は枚挙にいとまがない。
人々の恐怖心を煽り、高額な献金や物品購入によって救われると言って、日本の国民から巨額のカネを奪い取り、韓国の本部に送金してきた統一教会。自民党はそれを問題視しないどころか、選挙活動などを通じて協力関係を続け、教会は議員を広告塔として利用して信者を集めてきた。この相互依存関係は本当に断ち切れるのか。
教団の解散命令請求を出すだけでは、根本的な解決につながらない。解散が確定しても、宗教法人格を失い、税制上の優遇措置が受けられなくなるだけで、宗教活動そのものは禁止されない。
どんな手段を用いてでも集票合戦に勝ちたいという、見境のない政治家の欲望が存在する限り、これからも裏で政治を動かそうという勢力はのさばるだろう。そこに自浄作用がまったく働かない自民党の現状は、絶望的な政治不信を国民の間に広げている。
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image by: 細田博之 - Home | Facebook