8月31日、そごう・西武労働組合が西武池袋本店でストライキを決行。61年ぶりの大規模百貨店でのストとして大きな話題になるほどストがなくなった日本。対してお隣の韓国では、労働組合が政権と激しく闘っているようです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で、評論家の佐高信さんは、韓国で展開される「烈士闘争」について発端から解説。韓国とは対照的に、大会に首相を招いて喜んでいる連合への怒りの度合いを高めています。
韓国の建設労組の迫力ある闘い
10月6日夜、田町交通ビルで「日韓連帯で不当弾圧を許さない」集会があった。
「関西生コンを支援する会」の共同代表として主催者挨拶をした後、書かなければならない原稿があったので、途中失礼するつもりだった。しかし、韓国の全国建設労働中央本部政策局長のソ・ヨンホの迫力のある報告に最後まで席を離れられなかった。
韓国は民主派のムン・ジェインから保守派のユン・ソンニョルに大統領が代わり、労働運動に対する締め付けがひどくなっている。とりわけ活発な建設労組に対する弾圧は激しく、一時は壊滅的な状況に追い込まれた。
抗議のプラカードに「いっそのこと殺せ」と書いたものがあったことがそれを証明している。今年の2月に日本でいう閣議で大統領は建設労組に対して「建設現場の暴力団」略して「建暴」という悪罵まで投げつけた。
とてつもない弾圧を続けても屈しない関西生コンに「反社会的集団」略して「反社」とレッテルを貼った日本の経営者や一部のメディアとそれは酷似している。いつも言う如く、下半身が安倍晋三の岸田晋三政権こそ反社会的集団なのにである。
衝撃的なのは今年の5月1日、メーデーの日に、江原(カンウォン)建設支部第3支隊長だったヤン・フェドンが弾圧に抗議して焼身自殺したこと。ヤンには15歳の男の子と女の子がいた。双子である。
遺書には「何の罪もなく正当な労組の活動をしてきたのに、デモに関する法律違反でもないし、業務妨害及び恐喝の罪に問おうとするのは私の自尊心が許さない」とあった。そして野党には「これ以上労働者が弾圧される無念なことがないよう、今、ユン政権を退陣させてほしい」と訴えている。
ヤンは烈士と呼ばれることになるが、その志を継いで、建設労組、政党、市民社会団体、宗教団体、そして労働団体は次の5つの要求を掲げて烈士闘争を展開した。
- ユン・ソンニョル政府の公式的な謝罪と真相究明
- 政府の「建設現場の違法行為の根絶のための特別チーム」の解散
- 強制捜査を企んだユン・ヒグン警察庁長の罷免
- 5月、国会で建設労働者の雇用改善のための法案
―違法な下請け・請負、違法な雇用根絶、不払い賃金問題改善など―の成立 - 雇用問題の改善のため、政労使+専門家の対話機構の設置
ろうそくデモをやったり、ゼネストまでやっている韓国の労働者に対して、日本の労働者の集まりである連合は政権と対決するどころか、大会に首相を招いて喜んでいる。
連合に対して闘う労働者はストを打てと言いたいくらいである。「自己責任」の麻酔が効いて労働組合は白眼視されるばかりだ。本当に腹立たしい。
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