イスラエル閣僚「核使用も選択肢」発言の衝撃。ガザ攻撃の“一線超え”が招くアラブ諸国の一斉蜂起

 

鵜呑みにすべきではないハマスが提供する悲劇に満ちた情報

ハマスが10月7日に武力による一斉攻撃に出て、外国人を含む200人強の人質を取るという暴挙は、決して支持しませんし、容認できるものではありませんが、ハマスもまた、パレスチナ人の利益を叫びつつも、同胞を盾にしながら目的を果たそうと躍起になっています。

長年にわたる抑圧がパレスチナの人々に反イスラエル感情を高めさせ、それがハマスの躍進を後押しし、イスラム同胞団(隣国エジプトで一時は政権まで担った)の拡大に繋がったことは否めないですし、本来は対立対象であるハマス(スンニ派)と隣国レバノンのヒズボラ(シーア派)が、イスラエルの破壊を共通目的として手を組み、これまで反イスラエル抗争を起こしてきています。

今、ハマスはイスラエルに立ち向かうこと、そしてガザで起きている惨状をつぶさに伝えることで、最近、パレスチナから関心が遠のきつつあった周辺アラブ国(サウジアラビア王国やUAEなど)の関心を再度高め、アラブ社会における反イスラエル包囲網を再構築すると同時に、世界に散らばるイスラム過激派と称されるグループの蜂起をも連鎖的に起こさせようとしています。

そのような狙い・目的を垣間見る中で感じるのは、ロシア・ウクライナ紛争での双方の情報戦と同じく、ハマスが提供する悲劇に満ちた情報も、100%鵜呑みにはできないし、すべきではないということです。

間違いなく一般市民は命を落とし、生きる術を失い、そして非常に多くの子供たちが無情に殺されているのは確かです。

ただし、これを“だれが行ったのか”については、真相は闇の中に葬られています。

しかし、個人的にはWho did it?を追求する責任の押し付け・非難ゲームに加担する気は毛頭なく、いかに罪なき一般市民を一人でも救うお手伝いができるかに関心があります。

同じような熱意に燃えていたUNの元同僚たちのうち、約60名がこの数週間のうちに命を落としました。UNRWAが提供していた学校や病院への容赦ない爆撃(誰が行ったのかはあえて問いません)、北部から南部へと人々が逃れる助けをしているところを狙われた蛮行は決して許容することはできません。

このような危険に曝され、残念ながら国際機関の職員や“紛争地における人々の最後の希望の砦”として献身的にお仕事される国境なき医師団の皆さんもガザから逃れざるを得ない状況になってしまいました。

これまでいろいろな紛争の現場を経験していますが、初めての状況です。

このような状況下で、ついには調停・仲介の担い手が見つからなくなったという異常な状況が生まれています。

以前、どちらサイドにも話し合いのチャンネルを築くことが出来る国は、エジプトとトルコ、そしてカタールとお話ししたかと思います。

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エジプトは、国際スタッフの退避のためにラファ検問所の門を開けて受け入れ、医療的な対応が必要なパレスチナ人に対する治療を行うことにしましたが、イスラエルとその背後のアメリカ政府とは協議する気はなく、かといって、自国への戦火の拡大を極端に恐れるため、「パレスチナ人、特にガザの市民との連帯」を明言するものの、ハマスへの肩入れも行っていません。

比較的中立的なイメージがまだありますが、エジプト大統領府の顧問や外務省の高官曰く「今、この紛争に直接的に介入するつもりはない。最重要課題はこれが拡大し、地域的な、そして世界的な戦争にならないため、まずはエジプトへの波及を最小限に止めることが大事だ。仲介役を買って出るつもりはないし、今、イスラエル政府は話し合う気がないことが明白だ」と述べ、距離を置く姿勢を崩しません。

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