パレスチナ人の殲滅を目論むかのようなイスラエルの攻撃
トルコについては、エルドアン大統領がついにぶちぎれたのか「イスラエルの行動こそが真のジェノサイドだ」と公に非難し、「今のイスラエルと話し合う用意もなければ、イスラエルの行動を支持することもない」と述べ、最初は自ら名乗り出てみた調停役から自ら降りてしまいました(ここでエルドアン大統領の失言が飛び出すのですが、それは内容がきつすぎて報じられていませんし、私もとてもじゃないですが書くことはできません)。
カタールについては、全方位外交を実施することができる稀有な存在で、実際にハマスに取られた人質の解放の調停を行っていますが、範囲が「人質の解放と人道支援の拡大」に限られており、武力紛争の調停に乗り出すことはないと言われています。武力紛争の調停の場合、イスラエルとハマス、そして今回の場合はパレスチナ自治政府(ファタハ)の合意が必要とされますが、ハマスとファタハ側は態度を少し軟化させているものの、イスラエル側がカタールの介入を容認しない姿勢を取っています。
カタールはイスラム社会の中でも珍しくハマスの連絡事務所を国内に抱え、ハマスの政治的なリーダーをドーハに住まわせるなど、ハマスに物言える立場にあり、かつ直接的な調停・協議の場に使いやすいのですが、イスラエル側はカタールに対して「今は地域安定のためにハマスを掃討することに徹するのがイスラエルの使命であり、テロリストと話し合う余地はどこにもない」と伝え、調停を拒否したと聞きました。
通常であれば、これまで国連がその任を担うはずでした。
しかし、現在の国連安全保障理事会の完全なる分裂(disunity)と非難合戦、機能不全を見ていると、その調停役としての役割は担えないことは明白です。
日々増え続けるガザ市民の死者数を前に、緒方貞子国連難民高等弁務官の後輩であるグランディ国連難民高等弁務官は国連安全保障理事会の機能不全を非難し、
「あなた方15か国が下す決定、そして下すことを拒んだ結果は、今の世界のみならず、これから訪れる何世代もの人類に対して決定的な結果を与えることになる。
(The choices that the 15 of you make-or fail to make- will mark us all; and for generations to come.)
あなたがた理事国は目に余る武力行使や、理事会の分裂(disunity)、そして惨状を完全に無視することで、この歴史的に非常に複雑な戦争のジグソーを完成させるおつもりか?
(Will you continue to allow this jigsaw of war to be completed by aggressive acts, by your disunity, or by sheer neglect?)
それとも勇敢に世界を深淵から救い出すために必要な行動をリードするのか?
(Or will you take the courageous and necessary steps back from the abyss?)」
と15か国の理事国と、当事者たるイスラエル政府とパレスチナ自治政府の代表に問いを突き付けました。
この発言は、イスラエル・ハマス問題だけに留まらず、ミャンマー、スーダン、アフガニスタン、シリア、ウクライナ…など世界ですでに1億1,400万人規模にまで膨らんだ難民・国内避難民の窮状全体を指したものですが、発言の中に何度も出てくるように、ガザでの悲劇的状況を受けて、世界に突き付けた問いであると解釈します。
この発言に対してどのような反応があったのか、それともなかったのかは中にいないと分からないのですが、ご存じの通り、これまでのところ、悲劇を止める術は国連安全保障理事会からは出されていません。
多くの元同僚やアラブ諸国の政府の友人などと話していると、今回のイスラエルの入れ込みようは尋常ではなく、子供にまで容赦なく攻撃を加えて殺害する様は“ガザからパレスチナ人を永遠に追い出す”というレベルにとどまらず、もしかしたら、“パレスチナ人を根絶やしにするところ”まで行きかねない状況に映るようです。
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