年の初めの恒例となっている世界最大級のデジタル技術の見本市「CES」が米ラスベガスで開催されました。今年の「CES」を一言で「AI祭」と振り返るのは、メルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんです。10年以上CESの取材をしてきた石川さんは、トレンドワードを追うだけの「マーケティング」に過ぎないものが多かったと指摘。ごく一部の画期的なものを見極める必要があると伝えています。
AI祭だったCES 2024。でもそのAI、今までと何がちがうんですか
CES 2024を一言で振り返るならば「AI祭」に尽きるだろう。毎年、年始に開催されるCESは、その年のテックトレンドを占うイベントとなっており、最近では「IoT」や「スマートホーム」などがテーマとなっていた。しかし、どちらも先細りというか、本格的に普及しているところまでは至っていない感がある。
確かに、過去のCESを振り返って見ると、「今年のテックトレンドはこれだ」といっても、実際、ユーザーに定着することはなく、肩透かしに終わるというのを毎年、繰り返しているだけだったりする。
今年の「AI祭」に関しても、例えばフォルクスワーゲンがChatGPTに対応したカーナビを発表していたが、やれることといえば「周辺のレストラン検索」や「ちょっと寒い」と声をかけたらエアコンの温度を上げてくれるといった「別にChatGPTじゃなくてもいいんじゃない?」というレベルだったりする。
また、サムスン電子は「AI for ALL」というキャッチコピーで、あらゆる家電製品がAI対応となり、冷蔵庫はAIが載ったカメラにより、庫内に何があるか、賞味期限がわかるようになる。さらにAIに対応したパーソナルロボットが家じゅうを走り回るといった発表を行っていた。
しかし、CESを10年以上、取材してきた身からすると「10年前から同じ事を言っていないか」というツッコミを入れたくなってきてしまうのだ。特にテレビは典型的で「AIが載ったチップで処理するので画質が上がる」としているが、そんなこと10年前からやっていたのではないか。
家電メーカーとして、新たなテクノロジーによる提案を見せているようには感じるのだが、結局、トレンドワードを追うだけで、IoTやスマートホーム時代とやっていることは何一つ変わっていない。「AI」というマジックワードでプレゼンすることで、世間のトレンドに乗っているという「マーケティング」に過ぎなかったりするのだ。
ただ、デバイス上で生成系AI処理を施すことで、全く新しい使い方を提案してくれるところもあった。実際に使ってみると、「こりゃ、AIってスゴイ」と感じるデバイスもこれから出現するのは間違いなかったりする。
単にAIといっても、十把一絡げで、本質を見誤ることがありそうな気がしてならない。去年からAIを冠したデバイスやサービスが山ほど出ており、CESの影響を受けて、今年もAIを語るモノというのが雨後の竹の子のように出てくるだろう。
そのなかで「本当にいままでのAIと違うのか。何が画期的なのか」を見極めていく必要がありそうだ。CESが過去に繰り返してきた「トレンドワードは作るけど、定着しない」という失敗を繰り返す危険性もゼロではないはずだ。
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