Evernoteとは何だったのか。文筆家が「気楽なメモツール」を総括

 

■Webクリッパーとしては

Evernoteが流行りだした頃は、Webクリップが便利だと騒がれていましたが、むやみやたらにクリップしてしまうと「ゴミ屋敷化」してしまい、ろくに使い物にならなかった経験があります。

それにWebクリップは定型的な処理なのですから、むしろNotionでどんどん「流し込んでいく」使い方が向いているでしょう。逆に、Webページを完全な状態で保存しておきたいなら、それこそHTMLファイルとして保存したり、PDFにして保存したりといった手段もあります。その点で、Evernoteを「推す」ことはできなさそうです。

しかし、多様なデータを楽に保存できる機能だけはNotionはEvernoteの代替にはなってくれません。「こういうデータがあるから、こう保存しよう」と決めておくならばNotionがよいでしょう。しかし、突発的に発生したデータを「とりあえず」保存しておき、その後で扱いについて検討するようなラフな運用はやっぱりEvernoteなのです。

一応、UpNoteでは、かなり近い操作ができます。アプリしかなく、Webブラウザからのアクセスができないといった課題はありますが、常に自分の端末からしか操作しない人にとってはあまり気にならないでしょう。

また、UpNoteでは、Evernoteではできなかった「ノートの自由な入れ替え」ができます。気に留めておきたいノートなどを、ノートリストの上部に持っていくことができるのです。これは大きな魅力です。

■さいごに

総じてみると、Evernoteが私たちに提供してくれていたものは、今ホットなトピックである「ナレッジベース」や「セカンドブレイン」ではなく、「気楽なメモツール」だったと言えるでしょう。がちっとした利便性ではなく、ゆるっとした利便性。それがEvernoteの最大の魅力だったのではないかと思います。

ところが、ある時期からEvernoteはMicrosoftのオフィスシリーズをライバル視し、「ゆるっとさ」から「かちっとさ」へとシフトしはじめました。もちろん、ビジネスユースでないと十分な売り上げが作れないから──ユーザーの大半は無料の個人ユーザーだったはずです──という理由があったのでしょう。

しかし、そのことが根本的な部分でボタンの掛け違いを生んでしまったのではないかと思います。その点Notionは──Evernoteのわだちを見ているわけですから──はじめからビジネスユースを意識しており、実際にそれでうまく軌道に乗っているように見えます。人は未来を見通せないのですから、これは仕方がないでしょう。

では、Evernoteがゆるっとした利便性のまま、ビジネスとして成功する道はあったのか。個人的には険しいながらも可能性はあった、と考えていますが、そんな話を今したところで詮無いものです。

とりあえず、もしEvernoteの代替を探すならば、「気楽なメモツール」の観点で探してみるのがよいでしょう。逆に、もっとかちっとやりたいというのであれば、それこそNotionが最適かと思います。

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1980年生まれ。関西在住。ブロガー&文筆業。コンビニアドバイザー。2010年8月『Evernote「超」仕事術』執筆。2011年2月『Evernote「超」知的生産術』執筆。2011年5月『Facebook×Twitterで実践するセルフブランディング』執筆。2011年9月『クラウド時代のハイブリッド手帳術』執筆。2012年3月『シゴタノ!手帳術』執筆。2012年6月『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』執筆。2013年3月『ソーシャル時代のハイブリッド読書術』執筆。2013年12月『KDPではじめる セルフパブリッシング』執筆。2014年4月『BizArts』執筆。2014年5月『アリスの物語』執筆。2016年2月『ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由』執筆。

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