「57%のロシア人がナワリヌイを評価していない」は本当か
もっと理解できなかったのは、日経新聞の記事、
「ただ、保守的な国民が多いロシアでは、ナワリヌイ氏の評価は都市部を除けば、必ずしも高くない。独立系調査機関レバダ・センターが23年1月に実施した世論調査では同氏の活動を「評価しない」が57%を占め、「評価する」の9%を上回っていた」
これは事実なのでしょうか?
事実だろうと思います。
ロシアの言論空間は、他の国同様大きく二つにわけられます。テレビとインターネットです。
プーチンは、ロシアのテレビを完全に支配しています。それで、ロシアのテレビで、プーチン批判はいっさいありません。テレビでは、ナワリヌイについて、「死んだ」という事実だけが短く報じられました。
それを見ている「テレビ世代」(つまり年配の人たち)は、すでに「洗脳済み」なので、なんの感情もわいてこなかったことでしょう。そもそも「テレビ世代」は、報道されないので、ナワリヌイのことをあまり知らないのです。
では、インターネット世代はどうでしょうか?こちらは、ナワリヌイ派と反ナワリヌイ派(=クレムリン)で、激しい情報戦が繰り広げられています。
クレムリンの「説」は、なんと「ナワリヌイの死は、【 西側 】に都合がいい」というものです。断言はしていませんが、暗に「西側の諜報機関がナワリヌイを殺したのだろう」と言っているのです。どういうロジックでしょうか?
クレムリンのロジックはこうです。
ナワリヌイが亡くなるまで、西側は追い詰められていた。なぜ?フォックスニュースの元看板キャスター・タッカーカールソンが2月6日、プーチンにインタビューした。それが公開され、プーチンの主張が全世界に広がってしまった。
「このままではプーチンの主張が拡散され、俺たち(西側)の主張のウソがばれてしまう!」と危機感をもった西側の支配者たちがナワリヌイを殺した?
その結果、世界中の注目がナワリヌイの死に集中し、カールソンのインタビューは忘れ去られた。かくして、西側の支配者は、目的を達成したと。
こんなロジックです。
ちなみに「カールソンのインタビュー、プーチンのホントとウソについて、【裏メルマガ】で書いています。興味のある方は、ご一読ください。
● 裏RPE プーチンがタッカー・カールソンからインタビューを受けた意味
それにしても、「西側諜報」優秀です。ナワリヌイはヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に収監されていました。西シベリア、北極圏に位置するヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に収監されているナワリヌイを暗殺するとは…。
@参考:ヤマロ・ナナツ自治管区はどこ?
まったくバカげた説ですが、情報を大量に流すことで、一定数の人たちが信じるようになるものです。
ところで皆さん、これから日本の情報空間をじっくり観察していてください。「ナワリヌイは、西側諜報(たとえばCIA、MI6など)によって殺された。理由は、タッカーカールソン云々」と主張する人が出てくるかもしれません。そういう人たちは、
- クレムリン情報ピラミッドを妄信している
- クレムリンに操られている
- クレムリンのエージェントである
のいずれかですから。