大谷翔平1015億円契約のたった3分の1。スポーツ国家予算でも判る日本の衰退

 

心中か?

一方で、大谷翔平の今後に不安があることも事実だ。9月になされた二度目の右肘呪術については、詳細は明らかとなっていない。

米メディアは、昨年12月24日の日本のNHK総合で放送された大谷翔平へのインタビューに着目(*2)。

大谷が受けたと思われる手術について、

「こうした手術は興味深い。NFL(アメフト)サンフランシスコ49ersのクォーターバック、ブロック・パーディがUCL断裂から短期間で復帰するために受けたものとよく似ている。こうした靭帯修復・再建の増強手術をしたのはNFLの2選手だけで、公に知られている限りMLBではひとりもいない」(*3)

と記した。続けて、

大谷がふたたび右肘を負傷した場合、「配置転換」を決断する可能性を示唆したことにも触れ、「そうなった場合、もう投手ではなくフルタイムのDHか、どのポジションは分からないが、野手に転向すると解釈できる」(*4)

とも。しかし、アメリカで野球は、「クールじゃない」「おじさんのスポーツ」という状態。結局は“大谷頼み”、悪く言えば“大型契約により、大谷と心中”するつもりなのだ。

日本のスポーツ国家予算359億円は、大谷翔平の巨額契約のわずか3分の1の衝撃

大谷翔平の巨額契約は、日本という国の将来についても心配させる。大谷が後払いで受け取る金額は年平均で100億円を超える。

一方、2023年の日本のプロ野球で最高の年俸は、山本由伸とソフトバンクのロベルト・オスナの6億5,000万円だった。

選手の平均年俸を見ても、2023年のMLBは5億7,500万円であるのに対し、NPB(日本プロ野球)の選手は4,468万円だった。この差も12倍にものぼる。

しかしMLBの人気は日本のプロ野球とそれほど変わらない。

MLBはアメリカとナショナルの両リーグで合計2,430試合を行い、観客動員は7,074万7,365人、1試合あたりの平均入場者数は2万9,114人である。日本の方が入場者数は少ないものの、選手の年俸は10倍以上も高い。

その差異はビジネスモデルの違いに起因している。

結論として、日本のスポーツ国家予算の脆弱さが懸念される。2023年のスポーツ庁の年間予算は359億円で、そのうち約234億円がスポーツ環境の整備や老若男女のスポーツ振興に充てられている(*5)。

大谷翔平の大型契約の1,015億円のうち、約3分の1だけが日本のスポーツ国家予算に使われる…。これは日本の衰退を示唆している。

引用・参考文献

(*1)真海喬生、中井大助「大谷翔平、巨額契約の背景 米球団がねらう『スーパースター効果』」朝日新聞デジタル 2023年12月14日

(*2)「日本で放送された大谷翔平のインタビューに、米ファンが強い関心『みんなGoogle 翻訳を走らせている』と米メディア『手術の謎が深まった』」THE DIGEST 2023年12月26日

(*3)THE DIGEST 2023年12月26日

(*4)THE DIGEST 2023年12月26日

(*5)小林信也「大谷翔平の巨額契約『1015億円』のわずか“3分の1”…スポーツ国家予算『359億円』で“後進国”になり下がった日本の現実」デイリー新潮 2023年12月23日

この記事の著者・伊東森さんのメルマガ

初月無料で読む

初月無料購読ですぐ読める! 2月配信済みバックナンバー

※2024年2月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、2月分のメルマガがすべてすぐに届きます。

2024年2月配信分
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月18日(日)号 羽田空港衝突炎上事故 様々な論点  機能しなかった多重保護 「優先されるべきは事故調査」(2/18)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月17日(土)号 「野球2.0」 大谷翔平の大型契約が映し出す、日本の野球、そして国家の衰退 日本のスポーツ国家予算359億円は、大谷翔平の巨額契約のわずか3分の1という衝撃(2/17)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月11日(日)号  盛り上がるNFLスーパーボウル ケルシーとテイラー・スウィフトとドナルド・トランプと 陰謀論も拡散 日本も巻まれる(2/11)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月10日(土)号 日テレ「セクシー田中さん」問題の本質 テレビ局”電波屋”終了のお知らせ 脚本の在り方も問題が(2/10)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月4日(土)号 松本人志・性強要問題 「アフター・ジャニーズ」の答え合わせとしての吉本興業 マチズモ ホモソーシャル(2/4)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年2月3日(土)号 政治資金パーティー裏金化問題 これで決着? 政策活動費の闇も 検察とそれに群がるマスゴミのうさん臭さ(2/3)

いますぐ初月無料購読

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

2024年1月配信分

  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月28日(日)号 能登半島地震から3週間 見えてきた課題石川県、「能登でM8.1」試算を知りながら、防災計画は「M7.0」据え置く 日本の避難所は“難民キャンプ以下?” (1/28)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月27日(土)号 「英史上最大の冤罪」 富士通の郵便事業者会計システムの欠陥で TVドラマ化で再注目 何が起きたのか?(1/27)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月21日(日)号 「裏金」政治資金パーティー問題で初の逮捕者 池田佳隆議員とは? JC(青年会議所)人脈を駆使(1/21)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月20日(土)号 ドイツにおいて、プールの常識、変わる ”トップレス文化”再注目 裸はいつから恥ずかしくなったのか?(1/20)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月14日(日)号 ダウンタウン・松本人志の性加害問題で問われる”吉本タブー” 維新・自民党と結託し、日本の吉本化を進める!(1/14)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月13日(土)号 自民党政治資金パーティーの謎:裏金問題の深層に迫る 政治資金パーティーとは 「裏金」「キックバック」「還流」(1/13)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月7日(日)号  “アルゼンチンのトランプ氏”右派のミレイ氏が新大統領に就任 ミレイ氏とは? 混迷するアルゼンチン経済を救うことはできるか?(1/7)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月6日(土)号 「機密費」の闇、再注目 石川・馳浩知事の東京五輪「想い出アルバム作戦」で 機密費とは? 戦前よりもひどい管理状態(1/6)

2024年1月のバックナンバーを購入する

2023年12月配信分

  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月31日(日)号 自動車メーカー「ダイハツ」の型式認証制度に関する不正問題(12/31)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月30日(土)号  宝塚歌劇団 なぜタブーが生まれたか? 親会社・阪急を「電車のおじさん」 ”女の軍隊”(12/30)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月24日(日)号 ダイハツ工業で車両認証試験の不正問題が発覚(12/24)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月23日(土)号  「ジェンダード・イノベーション」、注目 ジェンダード・イノベーションの例 性差、フェムテック(12/23)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月17日(日)号 裏金化は安倍派や二階派だけでなく麻生派でも所属議員へのキックバックを行っていた疑いが浮上(12/17)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月16日(土)号 創価学会・池田大作氏死去 創価学会とは? 池田大作とは? なぜ信者が拡大していったのか?(12/16)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月10日(日)号 NHK、子会社が契約している派遣スタッフが取材メモを流出させたと発表(12/10)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月9日(土)号 米大統領選まで1年 そもそもアメリカ大統領選挙とは? バイデン、若者からの支持失う トランプ、返り咲きの可能性も(12/9)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月3日(日)号 自民党派閥の政治団体による政治資金パーティーについての問題(12/3)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年12月2日(土)号 英元首相キャメロン氏の外相復帰で問われる”元首相の品格” 日本とイギリスとの違い 「ゾンビ元首相」を生むメカニズム(12/2)

2023年12月のバックナンバーを購入する

2023年11月配信分

  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月26日(日)号 オランダの選挙で極右政党が勝利したことで欧州全体が動揺(11/26)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月25日(土)号 岸田内閣、「辞任ドミノ」続く 「不適材不適所」 来年1月21日、ささやかれる「首相退陣」説(11/25)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月19日(日)号 長崎・対馬 「核のごみ」拒否 調査だけで交付金・・・ かつてはカドミウム汚染に苦しめられ 処分場「日本に適地なし」(11/19)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月18日(土)号 日本版DBS、実現なるか? 世界の状況 データベース化よりも必要なもの 問われる日本人の人権意識(11/18)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月12日(日)号 インド、国名を「バーラト」へ変更? 「バーラト」とは モディ政権のヒンドゥー至上主義の裏で(11/12)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月11日(土)号 性同一性障害、性別変更の手術要件「違憲」 最高裁大法廷、違憲は12例目 世界の潮流から周回遅れの日本(11/11)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月5日(日)号 臨時国会、開幕 適材適所? 経済対策、効果限定的か 「増税メガネ」と揶揄する日本人の”頭の悪さ”が目に余る(11/5)
  • ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2023年11月4日(土)号  2028年ロス五輪、追加種目決定 金権体質、再び 「ぼったくり男爵」、インドにすり寄り 任期延長も視野に(11/4)

2023年11月のバックナンバーを購入する

image by: Conor P. Fitzgerald / Shutterstock.com

伊東 森この著者の記事一覧

伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版) 』

【著者】 伊東 森 【月額】 ¥330/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 日曜日

print
いま読まれてます

  • 大谷翔平1015億円契約のたった3分の1。スポーツ国家予算でも判る日本の衰退
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け