青春時代の思い出「マクドナルド前」が消えた。“墜落”した韓国ソウル「代表商圏」の現在

 

新村(シンチョン)から足が離れたのは学生たちだけではない。大型フランチャイズも一つ二つ廃業するほど、新村は商業性を失っている。2018年のマクドナルド廃業は新村のランドマークが消えた代表事例だ。ユン某氏(40)は「『マクドナルド前』は大学時代の出会いの場所であり新村駅3番出口前の代わりになる代名詞だった」とし、「2018年の廃業の便りは友人の間でも大きな衝撃だった」と話した。2004年にアジアで初めてここにオープンし、多くの注目を集めたクリスピークリームドーナツは2017年に閉店し、今年初めにはロッテリアも閉店した。

新村の没落は都心ジェントリフィケーション(gentrification。典型的には、富裕層が移り住んできて、建物の改修や建て替え、再開発、店舗立地などが進み地区の居住環境が大きく向上するプロセス。高級になる一方賃貸料も何倍にもなる)の典型的な過程を経て進められた。

始まりは高い賃貸料だった。公認仲介士のチャン・ウォンさん(34)は「2013年を基点に延南洞やマンウォン地区の開発が始まり、賃貸料が相対的に低い方に自営業者が移った」とし、「空きビルを大型フランチャイズが占めたが賃貸料が高くて人が入らなくてまもなく新村の商圏自体が一緒に死んでしまった」と説明した。

延世(ヨンセ)大学松島(ソンド)国際キャンパスに新入生たちが1年間義務的に通学し始めたのも原因の一つだ。新村商圏の主な消費層のうち4000人以上が減少し流動人口の急落幅がさらに大きくなったという評価だ。

増える空室にもかかわらず賃貸料は依然として高い。新村駅出口前の40坪の建物は保証金3億ウォン、家賃1600万ウォンでon saleが出ている状態だった。周辺の公認仲介士の話を総合してみれば、延世路付近は30坪基準で平均保証金2億~3億ウォン、家賃1000万~2000万ウォン程度で形成されていた。弘大と延南洞の商圏に押され、新型コロナウイルス感染症を経験して需要不足に苦しみながらも新村の高い賃貸料事情は大きく変わらなかった。

今年、梨花女子大学に入学したカン某さん(20)は「学校の前が一番怖い」と話した。梨花女子大5道の路地の入り口にある商店5か所は全て空っぽで、正面に見える交差点にも大型商店街が全て空室だった。2つの大型空室商店街の周辺にはゴミが散らばっており、建物の前に設置された木の板は壊れたまま放置されていた。

新村よりさらに深刻な梨大商圏墜落の理由の一つは「机上の空論的規制」の副作用もある。ソウル市は2013年、梨花女子大学前を「ショッピング・観光圏域」に指定し、衣類と理・美容中心街に育成するという計画を発表したが、むしろ商圏の活力を落とす結果を生んだ。

他の業種が入ってくる場合、建物内の駐車場を必須にしなければならない規制も作った。自然とカフェや飲食店のような他の業種は梨花女子大学の商圏に定着できなくなった。地域の特性を生かすために作った政策に商圏の自律性はブレーキがかかった。ここに追い打ちをかけるようにショッピングトレンドがオンライン中心に変わり、COVID-19で外国人観光客が減少し、梨大前は商圏の衰退が激しさを増した。ショッピング・観光圏域指定は10年後の昨年3月になってようやく解除された。しかし時期すでに遅しだった。

新村と梨大前一帯の公認仲介士(不動産業)たちは「空室が発生しても建物主が賃貸料を下げないのが問題」と口をそろえた。大部分の建物主が賃貸料を下げれば建物の資産価値が下がると判断するためだ。

「商店ビル賃貸借保護法」の影響もあるようだ。2018年10月を基準に以後に契約された件に対して建物主は1年に5%限度内だけで保証金と家賃を上げることができ、借家人との契約期間は5年から最大10年に増えた。

このため、梨大付近には商店街の場所にオフィステルが建設され、商圏の性格そのものが変わっている。一部の建物主は新しい商圏で街を復活させるよりオフィス照すなど住居施設に業種を変えた方が良いと考えた。最近5年間で梨大前に新しくできたオフィステルだけで、計10か所で6000世帯を超える。都市計画の専門家は「新村と梨大は老朽化した建物を再整備し新しいコンテンツを開発することが至急に見える」と指摘している。(国民日報ベース)

image by: Chokchai Suksatavonraphan / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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