米国に頼ってばかりはいられない。今こそ日本が「核の抑止力」について考えるべき理由(川口 マーン 惠美氏)

 

六ヶ所村で完成間近の「原子燃料サイクル」が抑止力になる理由

核の拡散を防ぐためのNPT(核不拡散条約)という条約がある。1968年に国連で調印され、これにより世界の国々が「核兵器国」と「非核兵器国」に分けられた。「核兵器国」はアメリカ、ソビエト(当時)、イギリス、フランス、中国で、この5カ国だけが核を保有できる。しかし、それ以外の185国の加盟国は、核兵器の製造も所持も永久に禁止という面妖な条約だ。独立国でありたい国々は、当然、これを蹴飛ばした。

NPTについて青山学院の福井義高教授は、「核武装するかどうかは日本の国民が決めることであり、不平等条約で縛られる性格のものではない」と語っている。だからこそ、「令和の日本には20世紀最大の不平等条約改正を目指してほしいものです」と。

ただ、肝心の日本人は、NPTをことさら不平等とも思っていないようで、どちらかというと「非核兵器国」であることを誇りに思う人たちもいる。それどころか彼らは、原子力の平和利用にさえ二の足を踏む。

青森の六ヶ所村で完成間近な「原子燃料サイクル」とは、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、それをもう一度核燃料に再加工して、発電に使う技術だ。これが順調に稼働すれば、全国の原発から出る核廃棄物の量は減らせるわ、自前の核燃料は作れるわで、“エネルギー貧国”日本の未来はかなり明るくなる。

ただ、再処理は非常に高度な技術の上、本来なら「非核兵器国」で行うことは許されていない。なぜなら、これはウランの濃縮技術であり、一歩進めれば原爆を作れてしまうからだ。現在、日本だけが特別扱いでこの技術を認められているが、六ヶ所村にはIAEAの査察官が24時間張り付いて、日本が原爆を作らないよう厳重に見張っている。

この六ヶ所村の「原子燃料サイクル」の開発を嫌がっているのが、日本国内の反原発派と、お隣の中国だ。再処理ができるということは、原爆を作る能力があることの証明であるから、中国は、日本が核兵器を作るのではないかと疑っているのだ。つまり、日本側が意識しようが、しまいが、これだけで、少しは抑止力になるかもしれない。

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