「消費税に殺されたんです」日本で零細業者や自営業者が次々と倒れていく理由

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領収書の整理も確定申告も消費税申告もしない政治家たちを横目に、税をぶんどられるために、慣れない事務作業に貴重な時間を奪われた中小零細事業者や個人事業主の悲鳴は、国には届いていないようです。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で、評論家の佐高信さんは、消費税の逆進性によって自殺者が増加すると警鐘を鳴らした書籍『消費税のカラクリ』を紹介。税務署ともめ重加算税まで課されて自殺に至った経営者がいる一方で、4億円もの申告漏れがありながら訴えられることすらなかった脳科学者・茂木健一郎氏のような人もいると、国税の「恣意的な運用」を批判しています。

消費税に殺されたんです

今年初めて、税金を申告した後の還付金を消費税が上回った。ある集会のプラカードに「市民は増税、自民は脱税」とあったが、折りも折りとて新たに怒りが湧いてくる。

1987年春、売上税という名で消費税が導入されようとした時、国民の怒りはすさまじく、党派を超えて各地で集会やデモが行われ、岩手の参議院補欠選挙で自民党の候補者が惨敗した。当時、社会党委員長だった土井たか子が、それで「山が動いた」という名文句を吐いたのである。

しかし、翌年、売上税は消費税と名称を変え、ほぼ同じ形で導入される。国民の怒りも長続きしなかった。消費税はそもそも不公平な税であり、景気を冷え込ませる。その逆進性は、所得の低い人ほど負担が大きくなるのである。

斎藤貴男は2010年に出した『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)で、これによって「輸入比率の高い企業は収益を拡大し」その代わりに「中小零細の事業者、とりわけ自営業者がことごとく倒れていく。正規雇用から非正規雇用への切り替えがいっそう加速して、巷にはワーキング・プアや失業者が群れを成す光景が見られる」と予測している。

「自殺に追い込まれる人々がこれまで以上に増加する」とも付け加えているが、誇張とは言えないだろう。消費税は事業の業績に関係なく大赤字でも取り立てられる。また、なかなか価格に転嫁できない。

仕入れに税額控除をめぐって税務署ともめた小出義人の事件がある。追いつめられて自殺した小出の妻がこう語っている。「うちの商売は下請けのまた下請けでしたから元請けさんに消費税分を請求し、払ってくれたとしても、必ずそれ以上の値引きを強いられる。いくら働いても儲からないんです」

大阪で電気工事業を営んでいた小出が亡くなった後、彼女がつぶやく。「消費税に殺されたんですよ。あんなものがあったのでは、何の展望も持てません。本来は明るくて、みんなに好かれていた人やったのに、最後の頃はお酒ばかり飲んで、『もう、あかんねん』って」

小出は当局の恣意的な運用で重加算税まで課せられ、それを払うためにサラ金もあるではないかと示唆された。「恣意的な運用」で忘れられないのは、2009年に発覚した脳科学者、茂木健一郎の一件である。彼は2006年から3年間の4億円の収入を申告しなかったのに東京国税局は悪質性が低いとして重加算税も課さなかった。

申告的には「脱税額が単年度で3千万円を超えたら起訴、1億円超えは実刑というのが相場」なのに茂木がそれを免れたのは権力側のタレントだからだろう。そんな茂木をNHKは「プロフェッショナル」に登場させ、「本人も深く反省し、今後は税務処理を適正に行うと表明している」として、「予定通り」それを放送した。

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