新たな中台対立の火種。漁船衝突事件で晒した台湾・民進党政権の不安定

Taiwan President Tsai Ing-wen and vice President Lai Ching-te wave during National Day(Double ten day ) on October 10, 2023.
 

こうした問題は、一旦自国の問題として考えてみると解りやすい。例えば日中で置き換えれば、もし中国海警局が日本の漁船に船を衝突させ、日本の乗組員が命を落としたという事件が起きたら、日本人はどんな反応をするだろうか、ということだ。

当初は日本の漁船が逃走し蛇行したことで転覆したと説明していた中国が、生き残った漁民の証言で「実は衝突された」ことを認めるという展開ともなれば、対中批判がヒートアップするのも避けられないだろう。中国国内では亡くなった漁民の家族が涙を流す映像も流れているのだ。そんな状況下で誠実さを欠いた対応をされれば、強烈な対抗措置に出てくるのは中国ばかりではないだろう。

つまり現状は、台湾側がある意味で習近平政権の鼎の軽重を問うような挑戦を続けているようなものなのだ。

この問題を、中国が「事件を突破口に台湾の実効支配を崩そうとしている」という視点からのみ伝え続ける日本メディアの不思議さはさておき、自分たちの対応の拙さを国際世論(日本など)を巻き込むことで補おうとする蔡政権は、やはり子供っぽく無責任だと批判されても仕方がない。小火が簡単に大火事になりかねない微妙な海域で、わざわざ相手の感情を害し、その尻拭いを国際社会にさせようというのだから、どうしようもない。

そもそも中国は、厦金海域で自らの存在感を急激に高めようと虎視眈々と狙っていたかといえば、極めて疑問だ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2024年3月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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