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習近平が広げすぎた大風呂敷。8兆円以上の援助も滞り中国の評判を貶めただけの「一帯一路」

中国と欧州を陸路と海路で結び、中国を中心とした巨大経済圏構築を目論んだ習近平国家主席の悲願である「一帯一路」構想。しかしこの壮大な計画は現在、風前の灯といった状況にあるようです。台湾出身の評論家・黄文雄さんが主宰するメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では今回、中国人へのテロ事件までもが発生している「一帯一路」の現状を紹介。その上で、同構想は中国の評判を落とす役割しか担わなかったとの厳しい見方を記しています。

※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:【中国】結局、中国の評判を貶めただけだった「一帯一路」

8.3兆円が履行されず。「一帯一路」で自らの評判を落としただけの習近平

「一帯一路」で8.3兆円不履行 中国の対東南アジア援助 豪研究所調査

習近平が掲げていた一帯一路が風前の灯火です。2013年、中国を中心に東西の世界をひとつにすると、習近平が大々的に発表した一帯一路でしたが、やはり大風呂敷を広げすぎたようです。今やイタリアは脱退し、『「一帯一路」に基づき東南アジア諸国に援助を約束した大規模事業のうち、3分の2近い547億米ドル(約8兆3,000億円)が履行されなかったことが分かった』。

「一帯一路」で8.3兆円不履行 中国の対東南アジア援助 豪研究所調査

中国経済は今や伸び悩み、若者の失業問題が深刻化し、不動産不況も脱していないなか、諸外国への巨額の融資を続けることができなくなってしまったのでしょう。以下、一部報道を引用します。

報告書によると、2015~21年の東南アジアの大規模インフラ開発事業で、中国は843億米ドル(約12兆8,000億円)の支出を約束していた。だが、実際に支出したのは296億米ドル(約4兆5,000億円)で、履行率は35%にとどまる。タイやフィリピンの鉄道建設、マレーシアのパイプライン敷設が中止されたほか、規模が縮小された事業もある。

「一帯一路」で8.3兆円不履行 中国の対東南アジア援助 豪研究所調査

融資が滞っているだけではありません。中国が実際に融資して、発展途上国で工事に着手した場所では、現地の人々を無視して横暴な工事を進める中国人のやり方が反感を呼び、襲撃事件にまでなっている例もあります。以下、報道を一部引用します。

パキスタン北部山岳地帯のベシャム近郊で26日、ダム建設に従事する中国人技師らを乗せた車列が襲撃を受け、中国人5人を含む6人が死亡した。地元警察当局などが明らかにした。パキスタンでは中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の拠点で襲撃が相次いでおり、現地の中国大使館は警戒を呼びかけている。

 

警察によると、現場はパキスタンと中国を結ぶカラコルムハイウェー。中国人技師らが12台の車列を組み、北部の拠点都市マンセラから、ダムの工事現場に向かっていたところ、道路脇の車が爆発し、車列の1台が谷に転落。技師や作業員ら中国人5人とパキスタン人運転手1人が死亡したという。

 

ダムは一帯一路の関連プロジェクトで、中国の建設会社が受注。インダス川をせき止め、ベシャム北方のダスーに建設している。2021年にも、建設に従事する中国人ら14人が襲撃で死亡するなど、標的になっていた。

 

中国はパキスタンを一帯一路の重要拠点と位置づけ、全土で総額600億ドル規模のインフラ工事を続けている。工事の大半は中国からの融資でまかなわれ、パキスタン側が返済に行き詰まり、債務危機が深刻化。一方、中国の進出に反発する勢力が一帯一路の拠点を狙う事件も相次いでいる。

パキスタンで中国人技師ら襲撃、5人死亡 「一帯一路」に逆風

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途上国の工事に送られるカネのためなら何でもする中国人

中国のやり方は、工事が決まった場所に大勢の中国人を送り込み、工事に必要な人員はすべて中国人で賄い、現地の人々の雇用は生みません。さらに、中国人が一気に大量流入したことで、現地の治安や衛生状況は急速に悪化し、中国人ギャングが闊歩し現地の人々は怯えて暮らすような状況が生まれます。

そもそも、発展途上国の工事に送られる人々に富裕層はいません。カネのためなら何でもするという価値観の人々ばかりの集団です。

そんな中国人勢力に反感を抱いた現地の人々が、中国人技師や労働者を狙ったのが、上記のテロ事件です。

一帯一路構想は、もともと世界での中国の存在感を高め、世界のリーダーとして中国が君臨するための試金石だったはずですが、10年経った今、結果的に中国の内情を諸外国に知らしめ、中国の評判を落とす役割しか担いませんでした。

中国ラオス鉄道など、一部のインフラは完成し、人気を博していますが、ラオスが貧しい国なのをいいことに、駅舎も列車もすべて中国流で、現地を少しも尊重していない押し付けのインフラです。ハッキリ言って、融資額も国としての器も中国には見合わない、壮大すぎる構想だったのではないでしょうか。

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