欧州に駐在する知人によると、老害という言葉はないけど「エイジズム(年齢差別)」への関心は高く、年齢で役職をおろしたり、業務を変えるなどした場合会社側は厳しく罰せられるとのことでした。
米国も欧州同様、エイジズムは厳しく罰せられるので、部下の年齢を上司が把握してないケースも少なくありません。
一方で、バイデン政権になってから「gerontocracy(老人支配)」という言葉が、頻繁に使われるよういなりました。22年には“One thing Americans agree on? Our politicians are too old.”という記事が話題になりましたし、今年の11月の本選挙が「バイデンvs.トランプ」の再戦の様相が強まっているため“gerontocracy=老人支配“を批判する記事が頻繁に投稿されています。
が、これらはすべて政治家に向けられた言葉であり、日本の「老害」とは少々異なります。
日本もかつて「老害」は政治家に向けられたものでした。
松本清張の『迷走地図』では、若手のホープと目された2世議員が、パーティーの演説で「老害よ、即刻に去れ」と政権のたらい回しを痛烈に批判し、参加者から拍手喝采される様子が描かれています。
ちなみにこの小説は永田町界隈の闇を描いた40年ほどまえの作品です。本著には「ヤミ献金」や「ペイバック」という、今で言うところの、裏金やキックバックと同じ意味を持つ言葉が記されています。あの頃と日本は…いや、正確には政治の世界は全く変わっていないのです。
本来であれば今の若手政治家こそ「老害よ、即刻去れ!」と裏金問題を一刀両断してほしいのですが、残念ながら「若手議員」からはそんな心意気も反骨精神も感じられません。
いずれにせよ、老害の一番の問題は「自己認識のなさ」であり、権力を手にし、絶対感を一度でも味わうと人は、自分が見えなくなる。だからこそ、「老害」という言葉で思考停止しないで、年齢に関係なくすべての人が生き生きと働くことを考えなきゃいけないのです。
では、老害がどんな思考停止を具体的に招いているのか?これ以上書くと長くなりますので、またの機会にしましょう。
みなさまのご意見、感想、経験などお聞かせください。
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