学歴詐称の状況証拠に重み。「チラみせ」卒業証書は通用せず
小島氏が小池知事の学歴詐称を確信する根拠となった出来事をおさらいしておこう。
東京都知事選を間近にひかえた2020年6月6日のことだ。学歴詐称を疑う都議会からカイロ大学卒業証書・卒業証明書の提出を求められていた小池知事は、その提出をせずに難局を切り抜ける方策を、環境大臣時代からの側近である小島氏を呼び出して相談した。
小島氏はカイロ大学に声明文を出してもらうよう提案するとともに、選挙まで期間が短いので、その声明文を待つことなく都知事選への出馬会見を行うよう進言した。会見で学歴に関する厳しい質問が飛んできた場合の回答案まで用意し、荒木氏と樋口氏にメールで送信した。以下はその内容の一部だ。
カイロ大学卒業について色々な話があることは承知していますが、カイロ大学への入学と卒業したことを認める権限があるのはカイロ大学だけであり、そのカイロ大学が入学と卒業を認めているのですから、私としてはそれ以上のことを申し上げることはありません。
小島氏の4年前のこの文案と同じ内容の回答を、現在に至るまで小池知事は記者会見で繰り返している。
小島氏が提案して3日後の2020年6月9日、学長のサインのついた声明文がエジプト大使館のフェイスブックに掲載された。実はこの間に、樋口氏はその声明文の文案についてA氏とメールでやり取りしていた。6月7日、樋口氏からA氏のスマホに届いたショートメール。
大学ないし国からの、望ましい声明文面案、作っていただけないでしょうか。すいません、本人から声明文案、作っていただけないかと依頼ありました。かなりつかれてました
これを受けてA氏が文案を書き、小池氏と樋口氏にメールで送信した。その内容は、大使館のフェイスブックに載った「カイロ大学声明」と文章の構造が同じである。
小池知事は「カイロ大学声明は大学が自発的に作成、発表したものだ」と主張し、小島氏やA氏の関与については口を閉ざしている。
小島氏の告発について都庁職員や記者クラブから「小池氏と関係が悪化し21年に袂を分かった小島氏の恨み節だ」などと冷めた声も聞こえてくるが、元側近の小島氏が明らかにした事実は、状況証拠であっても重みがある。
検証しなければならないのは、小池氏サイドで作成した声明文をカイロ大学のものとして発表することを、エジプト大使館がすんなりと受け入れるものなのかということだ。
いくら大使館が所在する東京都の知事からの依頼であっても、エジプトの主権にもかかわることであり、はねつけるのが普通だろう。にもかかわらず、事実として、A氏作成と思われる声明文が掲載されたのだ。