自民党の無反省と「連座制詐欺」を正しく報道せよ
今回の政治資金規正法改正には、ほかにもいくつかのポイントがあるが、あえて「連座制」に焦点を当てたのは、自民党の発表を受け複数のメディアが「連座制を導入」という言葉を安易に使っているのを目にしたからだ。
「いわゆる連座制」と表現したところはともかく、普通に「連座制」と評したところもあった。
報道自体は内容に批判的ではあるのだが、ここで注目すべきは「連座制」という言葉より「いわゆる」の方だろう。
自民党が公選法で規定しているような「連座制」と同様の案を提示した、という印象操作に、安易に乗ってはいけない。
それは今後、法案策定に向けた与野党協議などの場で「自民党も『連座制』を導入したのだから、この案で合意すべきだ」というように、水が低きに流れるような再発防止策をまとめて問題を「幕引き」する、といった狙いに、簡単に取り込まれてしまうことにもつながる。
もちろん自戒を込めてだが、言葉の使い方には慎重でありたい。
それにしても筆者が疑問に思うのは、この政治資金規正法改正案の制定を「そんなに急ぐ必要があるのだろうか」ということだ。
裏金事件の真相は全く解明されていない。裏金づくりの意図も、その使途も、自民党は何一つ、国民が納得のいく説明をしていない。「何が問題だったのか」が明らかにされていないのに、どんな法改正が必要かを決めるのは無理ではないか。
それに今回の裏金事件は、政治資金規正法の「抜け穴」をすり抜けた脱法的行為、という話ではない。「堂々と法を破り、踏み倒した」のである。法律を破った相手に対し「新たに法律を作り直す」ことで、再発防止が図れるとは思えない。また法が破られるだけではないのか。
今急ぐべきは、再発防止の法改正ではない。あくまで事件の真相解明だろう。動かすべきは政治改革特別委員会より、政治倫理審査会(政倫審)の方ではないのか。
28日の衆院3補選で立憲民主党が全勝した結果、衆院は政倫審で野党側の委員数が1人増え、野党側が単独で審査の申し立てが可能になるという。だからといって裏金議員が簡単に政倫審に出席するとも思えないが、少なくとも自民党への圧力にはなる。
自民党の「幕引き」演出に手を貸す結果になりかねない法改正より、野党はむしろ、当座は特別委よりこちらを主戦場にした方が良いのではないか。

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