81%が中国を「最も好ましくない国」と考える米国民
さて、そんな状況にあるアメリカですが、米国民は、中国のことをどう見ているのでしょうか?『NEWSポストセブン』5月22日付。
米国の国際政治に関するシンクタンク「ピュー研究所」はこのほど、米中関係に関する世論調査を行った結果を発表し、米国民の81%が「中国は米国の最大のライバルであり、米国にとって最も好ましくない国」との見方を示していることが明らかになった。
アメリカ国民の81%は、「中国はアメリカ最大のライバルであり、アメリカにとって最も好ましくない国」と考えているそうです。
これ、どうなんでしょうか?たとえば、日本の対中観と比べると?
「笹川平和財団」の調査によると2023年度、中国に親しみを感じない人は51.3%、どちらかというと親しみを感じない人は19.8%、あわせて71.1%になっています。
一方アメリカの調査は、「アメリカにとって最も好ましくない国」と考える人が81%もいる。「アメリカ国民のほとんどの人が、かなり反中」と言えるでしょう。
ところで、アメリカ国民の対中観は、昔と今で異なるのでしょうか?
同研究所が2009年に行った同様の調査では、米国民の49%が「中国は米国にとって好ましい国」と答え、「最も好ましくない国」としたのは38%だった。この15年間で中国に否定的な数字が2倍以上に増えたことになる。
また、今回の調査で中国を好ましい国と答えたのはわずか16%で、2009年調査の3分の1にも及ばなかった。
(同上)
15年前、中国のことを「最も好ましくない国」と考えているアメリカ国民は、たったの38%だった。それが今では81%。15年で倍以上になっています。
なぜ、こんなことになったのでしょうか?いろいろあるでしょうが、一番の理由は、「中国がアメリカのリアルな脅威になった」ことでしょう。
思い出してみてください。2009年、中国のGDPは、まだ日本以下だったのです。ところが2010年、中国は、日本を抜きました。そして、2012年、「中国の夢」をスローガンに掲げるナショナリスト習近平がトップに立った。
2015年3月には「AIIB事件」が起こりました。この時、アメリカは、同盟国群、親米国群に「中国主導のAIIBには入るなよ!」と命令していました。ところが、イギリスが先陣を切ってアメリカを裏切り、それをフランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、イスラエル、韓国などが追ってAIIBに入ってしまったのです。アメリカの覇権は風前の灯でした。
そんな流れもあって、2018年のペンス反中演説から、米中覇権戦争がはじまったのです。世界は今、2009年からはじまった「米中二極時代」の「米中覇権戦争」の時代なのです。
アメリカ国民の81%が、「中国はアメリカ最大のライバルであり、アメリカにとって最も好ましくない国」と考えている。つまり、ロシア、イラン、北朝鮮は、「最大のライバルでも、最も好ましくない国でもない」と認識されているということでしょう。
アメリカ国民は、「真の脅威が誰なのか正しく理解している」と言えます。
米中覇権戦争が世界情勢の軸にある。そして、「ウクライナ―ロシア戦争」「イスラエル―ハマス、イラン戦争」「台湾―中国対立」「韓国―北朝鮮対立」は、「そこ(米中覇権戦争)から派生している問題」と考えると、世界の大局が見えてきます。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2024年5月22日号より一部抜粋)
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