韓国の医療ストライキ再び勃発か。責任はいったいどこにある?

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韓国の医療ストライキが再び起きると予測されていますが、その責任はどこにあるのでしょうか?無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、韓国内部の動きを詳しく説明しています。

韓国の医師ストライキは、だれの責任か?

医者の信頼度は高い。昨年末の「最も信頼する職業」の世論調査では、1位が科学者、2位が医師だった。信頼度最下位の政治家はもちろん、判事、公務員、聖職者より順位が高い。

ところが、ストライキをする瞬間、自分の利益のために患者の信頼を裏切った破廉恥な姿に転落する。ストの目的が「縄張り争い」ではなく間違った医療政策の見直しだとしても、すぐには通用しない。生命を扱う職業であるだけに、より高い倫理意識が期待されているわけだ。

韓国はストを行う医師を刑法、医療法、公正取引法で処罰するが、ほとんどの国では医師の団体行動権を認めている。過去100年間、70か国で300件を超える医師ストライキがあったという。

英国では専攻医たちが昨年3月から10回41日間、給与引き上げを要求してストライキを行った。世界医師会は世界各地で医師ストライキが頻発すると、2012年に医師たちの団体行動を許容する声明を出し、ストライキの名分が医師たちの劣悪な勤労条件の改善であれ歪曲された政策撤回であれ、患者の安全と無関係ではないのでできると話した。

だが、医師ストライキが一般労働者ストライキと同じではない。世界医師会は、医師たちが被雇用者として団体行動をすることはできるが、専門家として倫理的義務から免除されるわけではないと話した。世界医師会が提示した団体行動規則の核心は、ストライキに先立って集会、広報、交渉、仲裁の努力を最大限傾けること、ストライキ期間中に必須応急医療を持続することの2つだ。

この基準に照らし合わせてみると、今の韓国の医師ストライキは不法かどうかは別として倫理的と見ることはかなり難かしい。普段、医療改革に無関心で、医学部の増員協議には消極的で、政府が「医学部の増員2000人」を発表すると、ようやく動いたが、政府との対話どころか、医師の内部の意見調整にも失敗し、代案を出せず、右往左往した。

「これまで休診を除いてすべての努力を尽くした」という医師たちの主張に同意する人が何人いるだろうか。ストライキをしても重症・希少疾患・応急患者の診療は開いておかなければならないが、末期がん患者の抗癌治療をせず、熱が出て苦しむ子供を抱いて行っても受け入れてくれなかったという。未来の国民の健康のためのストとはいえ、今日の患者犠牲が手段になってはならないのが医療倫理だ。

だからといって、医師のストライキが医師たちの悪口だけを言って終わらせる問題でもない。医師ストライキが非倫理的だと反対する学者たちも、その責任は政府が共に負わなければならないと考える。

国民健康権保護のための政府の役割が大きくなり、ヒポクラテス宣誓が要求する伝統的な医師・患者関係が医師・政府・患者の三角関係に拡張されたので、患者に対する責任を医師だけに要求するのは不当なことだ。

韓国は、すべての医療機関が健康保険患者を診療するよう法律で強制し、政府が価格決定権を握っているため、政府の権限が莫大だ。それだけに壊れた医療システムに対する政府の責任も大きい。

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