やりたい放題「カオス都知事選」に立命館大学教授が警鐘。NHK党の悪ノリも自民の裏金も日本国民の“写し鏡”だ

2024.06.27
 

有権者が確固たる意志を持ち拒絶すべき「悪い奴ら」の動き

東京都知事選に話を戻す。「金儲け」のためのポスターを出す人が現れるのは、それを買う人が多数いて、儲かると思うからに他ならない。言い換えれば、「金儲け」にならないなら変なポスターを貼らないし、そもそも立候補してこないはずだ。

つまり、有権者が「金儲け」に加担することなく、「政策」中心に見識を持って都知事を選べばいいだけのことだ。筆者は、それは不可能なことではないと思う。結局、政治も「市場原理(マーケット・メカニズム)」のようなもので動いているからだ。

都知事選の選挙ポスター掲示板に、条例違反や風営法違反が疑われるポスターが多数掲示された時、東京都選挙管理委員会の電話がひっきりなしに鳴り、告示翌日の21日までに1,000件以上の苦情や問い合わせが寄せられたことはよかった。

有権者から、変なポスターに対して、明確にNOが示されたからだ。警察も動きやすくなり、ポスターが撤去されて、金儲けができなかったのだ。

法改正して罰則を設けても、悪い奴らは抜け穴を探して、金儲けの手段を見つける。それよりも、有権者自身が確固たる意志を持って、そういう動きを拒絶することが大事だ。

欧州の「大衆迎合主義」とは異なる日本の政治現象

最後に、現在日本の政治に起こっている現象について、より大きな視点から考えてみたい。日本にも、SNSなどを利用した新しい政治勢力の参加が起こっている。この連載では、はそれを歴史的な経緯も踏まえて整理した。

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だが、この現象は、欧州で再び拡がり始めている「大衆迎合主義(ポピュリズム)」とは異なるものではないかと思い始めている。

欧州のポピュリズムは、既存の右派政党(保守政党)と左派政党(リベラル政党)が、都市部に人口が移動したことで、都市部の中道層の票を獲得することが政権獲得につながるようになったことで、既存の支持者を置き去りにして都市部の票の獲得競争をしたことで起こった。保守・リベラルともに市場主義・競争主義・規制緩和・自由化・民営化などを争って実行するようになったからだ。それが1980年代から2008年のリーマンショック前までの「新自由主義の時代」といえるだろう。

コアな支持者は、間違っても左派は右派に投票しないし、右派は左派に投票しないという政党側の安心感でもあった。しかし、コアな支持者は長らく疎外感を感じていた。移民に仕事を奪われたり、都市部と地方の格差が広がったりしても、政党は都市に目を向けるばかりという不満も募っていった。

そこに出現したのが、極右・極左の大衆迎合政党だった。彼らは、置き去りにされた既存政党のコアな支持者に彼らの利益を守るとダイレクトに訴えた。移民排斥など感情的な訴えをSNSなど洗練された方法で行い、劇的に支持を拡大した。

重要なのは、極左であれ極右であれ、大衆迎合政党はその言い方は過激だとしても、あくまで既存の政党から「置き去りにされた人たち」であり、社会から「疎外された人たち」に寄り添っていったということだ。つまり、あくまで「大衆迎合」とは「大衆」のためだということだ。

要するに「弱き者の味方」というスタンスは一貫しているのだ。もちろん、それは表面的な綺麗事だというのは当然だ。大衆迎合政党は、例えば「移民」のように敵を明確に作って煽ることで指示を拡大してきた。ただ、それはあくまで、本当の弱者を守るという建前になっている。そして、それが、政治活動として最低限の節度を保つことにもつながってきた。

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