プーチン「核兵器」を実戦投入か?停戦の意思なき独裁者が“一線を超える”最悪シナリオ

 

ゼレンスキーに残されている「好ましい内容」ではない選択肢

ゼレンスキー大統領については、すでにプーチン大統領と交渉することを禁ずるという大統領令で自らの選択肢を絞っているため、プーチン大統領が治める現在のロシアと停戦協議をすることは出来ないことになっていることと、自らの大統領として付託された任期が5月20日に切れていることから、大統領職に留まるための正当性を示すためには、ウクライナが戦争状態にあることが必須条件になります。

ゆえに分が悪いことも、すでに他国の関心が薄れていることも重々承知しつつ、様々な会議を行脚し、ウクライナがロシアに対して戦い続けるための支援を各国に必死に訴えかけ、いろいろな面で不利な情勢にありつつも、ただただ戦い続けることを選ぶしかない状況に直面しています。

ちなみにプーチン大統領ははじめから“ゼレンスキー大統領”を交渉相手とは見ておらず、こちらも大統領令でゼレンスキー大統領との交渉を禁じていますので、現状下ではロシア・ウクライナ間での停戦協議が行われることはないと思われますが、仮に翻意し、停戦協議を持ち掛ける場合、ゼレンスキー大統領に残された選択肢はあまり好ましい内容はありません。

残された選択肢の1つ目は【降伏して戦争を終わらせること】ですが、これはウクライナの主権と領土の喪失に繋がり、恐らくウクライナという国が無くなることを意味します。

プーチン大統領サイドは、恐らくクリミア半島の支配の確定・固定化と、一方的に編入した東南4州を獲得すれば十分な“勝利”として国内外に向けてアピールできるでしょうが、ウクライナが降伏した暁には、要求はエスカレートする可能性がかなり高まります。

ウクライナを“残す”ような方向に持って行くのであれば、有効な調停プロセスが必要になりますが、それには欧米サイドのかなり強力なサポート(政治外交的なサポートと、軍事介入オプションの明示)が必要となりますが、ロシアによる報復を恐れて大胆な介入を躊躇する各国の姿勢からして、この実現は限りなく困難だと思われます。

2つめは【勝つことはできなくてもひたすら抵抗を継続して、少しでも有利な条件をロシアから絞り出す】という戦略でしょう。

これはぱっと見、美談として語られそうなシナリオですが、現実的にはかなりの人的犠牲を強いる戦略となりますし、徹底的に抗戦してロシア軍を疲弊させ、かつロシアから何らかの妥協を引き出すためには、今まで以上に欧米諸国が本気でウクライナを軍事的・経済的に支える覚悟が必要になります。

しかし、この条件がいかに達成困難かは、最近の欧州各国における極右勢力の台頭の背後にあるウクライナ支援疲れとインフレへの深刻な懸念が、確実に各国の政策の方向を変えてしまっていることからも分かります。

一応、ワシントンDCで開催されたNATO創設75周年の首脳会議で400億ドル規模の追加支援の提供が宣言されたものの、それが来年以降、本当に実施できるかどうかは不透明ですし、果たして“揺るぎない支援の継続”がこれで足りるのかは分かりません。

オランダやデンマークが供与するF16はやっと導入されますが、頼みのドイツのタウルスミサイルは出てくる見込みはないですし、一時は派兵の可能性も仄めかしたフランスのマクロン大統領も、それを実施するための政治的な基盤は揺らいでおり、気のせいかウクライナマターに関する発言もトーンダウンしています。

継続的で圧倒的なレベルの支援がウクライナに来ない場合、まだ余裕があるとされるロシアに抗い続けることが難しいだけでなく、ロシアから停戦における条件を引き出すことも困難になると言わざるを得ません。

そうなるとこの戦略も取りづらくなります。

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