プーチン「核兵器」を実戦投入か?停戦の意思なき独裁者が“一線を超える”最悪シナリオ

 

今後の展開を占う大きなカギとなるNATOの反応スピード

仮にロシアが一線を越えて核兵器を今回使用する場合、どのようなことが考えられるでしょうか?

2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻初期に恐れられていた“ウクライナ本土への使用”は、物理的・心理的に決定的な打撃を与えることになりますが、同時にロシア兵も犠牲にし、かつロシア国内にも放射能汚染が広がることが確実視されるため、現実的なオプションとは言えません。

仮にウクライナに対する核兵器使用が起こるとしたら、それはロシアが敗北するような状況に追い込まれて最後に自殺的に行われる選択肢と言えます。

より現実的なのは、EUおよびNATOへの警告的な意味合いを持たせるならば、ポーランド国境に近いウクライナ西部リビウあたりへの使用や、“裏切り者”バルト三国周辺への使用を決行して「これ以上、(ウクライナを足掛かりに)ロシアの勢力圏にNATOが土足で踏み込んでくるのであれば、ロシアは自衛のために(国家安全保障のために)核兵器による反撃も辞さない」というメッセージを送るという手法が考えられます。

実行にはかなりハードルが高いことは疑いないですが、絵空事とは言い切れない悲しさ・恐ろしさがあります。

この場合、NATO諸国がどのような反応を即時に示すかが、今後の展開を占ううえで大きなカギです。

もしNATO諸国が、collective(集団安全保障)かcoalition of the willing(志を同じくする国家群)としてかは分かりませんが、ロシアによる核兵器の使用を“redlineを超えたもの”として即時に反撃に出た場合は、もうその戦いはロシア・ウクライナ間の戦争ではなく、確実に世界各国を巻き込む第3次世界大戦の様相を呈すると思われます。

その場合、報復はロシア本土への核による本格的な報復なのか。それとも核兵器ではなく通常兵器による報復になるのか?または、ロシア本土に対する報復ではなく、あくまでも核戦力部隊を壊滅させる選択的な報復になるのか?

どれであったとしても、NATOにとっての大きなジレンマは【ウクライナはNATOの加盟国でないために、ウクライナが攻撃された場合には第5条の集団的自衛権の行使の対象には当たらないが、もし加盟国であるポーランドやバルト三国に直接的な被害が及んでいなくても、放射能汚染という形で壊滅的な打撃を与えられた場合には、公使の対象になるか否か】という問いに対する解釈だと考えます。

そしてほぼ確実にその解釈を巡る議論と対応はかなりの時間を要し、実際にNATOとしての行動・反応ができるまでにかなりのタイムラグが発生することは、NATOの信頼性に大きな傷となります。

恐らくロシアはそれを試しに来るのだと思われますが、そのために果たして核兵器まで用いるかどうかは、私には分かりません。

しかし即時対応した場合(親ロシアのハンガリーやトルコが「さすがに核兵器はダメだろう」とロシアに背を向ける場合が考えられる)には、ロシアに恐怖が走るかもしれませんが、ずっと一貫して「ロシアが存在しない世界は存在に値しない」という主張するプーチン大統領の存在故に、First Useがロシアによってなされて核兵器の抑止論が破れ、一気に破滅に向かった打ち合いが始まるという最悪のシナリオも想定できます。まあないと思いますが。

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