7月21日、突如として11月の大統領選からの撤退を表明したバイデン大統領。自身の後継としてハリス副大統領を推薦しましたが、識者はこれをどう見たのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、バイデン氏がハリス氏に「最後のバリア」を打ち砕くチャンスを託した動きについて抱いた感情と、彼女の今後に対する興味を記すとともに、女性活躍の壁が高くなるばかりの日本社会に対して批判的な目を向けています。
※本記事のタイトルはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:“バリア”を砕いたその先は?
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
“バリア”を砕いたその先は?ハリス氏、初の女性米国大統領になれるのか
前回、トランプ前大統領が副大統領に指名したバンス上院議員についてあれこれ書きましたが、今回はハリス氏を取り上げます。
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ご承知のとおりジョー・バイデン大統領が大統領選から撤退し、カラマ・ハリス副大統領を後継候補として支持する考えを示しました。
ハリス氏が副大統領に就任した時のスピーチで、思い出されるのがバイデン氏について話した以下の内容です。
彼(ジョー)は、この国の歴史に残る最も堅固なバリアを打ち砕き、女性を副大統領候補に選んだのです。私が最初の女性の副大統領になるかもしれませんが、最後ではありません。
そして、今回再び“ジョー“は、最後のバリアを打ち砕くチャンスをハリス氏に託した。いや、正確には「託さざるをえなくなった」。年齢を理由にした差別や偏見を意味する「エイジズム」を早くから禁止してきたアメリカで、81歳のバイデン氏が撤退を余儀なくされた末の選択とは、なんとも皮肉ではありますが、海の向こう動きを羨ましく思ってしまうのは、私だけでしょうか。
改めて言うまでもなく、日本は先進国とは思えないほどの女性活躍後進国です。世界経済フォーラムが毎年公表する『世界ジェンダー・ギャップ報告書』では、まんねんビリグループを独走中で、2023年は146カ国中、総合では125位、政治分野では138位です。
米国も総合では43位ですが、政治分野では63位と大きく後退します。女性大統領が誕生していないので低く評価されたのです。
ちなみにG7を見ると、総合では、ドイツ(6位)、英国(15位)、カナダ(30位)、フランス(40位)、米国(43位)で、イタリア(79位)と続きます。政治分野ではドイツ(5位)、英国(19位)、カナダ(33位)、フランス(39位)、米国(63位)、イタリア(64位)です。
アメリカは研究者や企業経営者で女性が、ごく普通に活躍しているので、そろそろ女性大統領が出てもいいように思いますし、多様性の象徴でもあるハリス氏が史上最高齢の大統領から渡されたバトンを、今後どのように活かし、戦いを繰り広げるのか?興味は尽きません。
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