ウクライナ戦争の停戦交渉開始の条件としてプーチン大統領が明らかにした、ウクライナ東部のロシア割譲とウクライナのNATO加盟断念という2つの条件。朝日新聞はこれを強く批判しましたが、識者はどう見るのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野孟さんが、「もっともらしいお利口さんぶりっ子の論調は正しいのか」として同紙の解説記事を検証。そもそもなぜロシアが軍事侵攻に至ったかを詳説するとともに、3割を超えるウクライナ国民から、領土を割譲してでも停戦の早期実現を求める声が上がっているという事実を紹介しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:ウクライナ戦争の停戦交渉の条件をめぐる腹の探り合い/接点があるとすればどこなのか?
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
朝日新聞「身勝手で停戦する気がない」は正しいか。プーチンが示した停戦交渉開始の条件
7月22日付「朝日新聞」で駒木明義論説委員が「プーチン氏の『停戦条件』」と題した1ページ大の解説記事を書いている。プーチンが6月14日の外務省幹部と会合で、ウクライナと停戦交渉を始めるための条件を初めて具体的に明らかにした。
- ウクライナ東部のドネツク、ルハンスク、中南部のザポリージャ、南部のヘルソンの4州からウクライナ軍を完全徹底させること、
- ウクライナがNATO加盟を断念すること、
――の2点がそれで、「ウクライナがこうした決定を発表し、実際に軍の撤退を始めたら、ロシアは直ちに戦闘を停止し交渉を開始するだろう」とプーチンは語った。
これに対する駒木論説委員の評価は「乱暴極まる要求というしかない」、「交渉の提案ではなく領土の割譲要求だ」というものであり、さらにプーチンが7月4日の記者会見で「敵が停戦期間を利用して戦闘再開に備えることを禁ずる措置がとられなければ停戦は不可能」と述べたことを含め、「あまりに身勝手」で、プーチンには「そもそも停戦する気がない」のだという判断を強く押し出している。この記事のサブ見出しも「身勝手な内容、にじむ戦争継続の決意」となっていて、停戦する気がなく戦争を継続するつもりだからこんな無理難題の交渉条件を持ち出しているのだという印象を読者に与えたがっているようである。
さて、この尤もらしい、お利口さんぶりっ子の論調は正しいのか。
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